Up 「正投影図」の授業 作成: 2013-03-22
更新: 2013-03-23


    「正投影図」の授業内容/授業進行は,つぎのようになる:
      1.「正投影図」の主題の出自──正投影図の理由
      2. 正投影図における<メリット・デメリットのトレードオフ>
      3.「正面・上面・側面」の意味
      4. 正投影図の作成──正投影図を作成できるカラダづくり

    1.「正投影図」の主題の出自──「正投影図」の理由
    「正投影図」の主題は,「投影図」の主題と何が違ってくるのか?
    授業設計は,この問題意識を正しく持つことから始まる。
    これができて,つぎに主題を正しく捉えることへと進む。
    この二つを経て,はじめて授業の入り口に立つ。
    翻って,この二つがやれていないで授業をやっても,無駄である。

      無駄な授業は,生徒がかわいそうである。
      生徒は,自分の受ける授業を疑わない。

    投影図は,3次元の図形を2次元図形に変えるものであるから,表現としてとうぜん無理がある。
    一般の投影図 (「見取図」) では,特に長さの比が失われるものになる。
    正投影図は,長さの比を保つ図法である。

     註 : 「長さの比を保つ」は,「角度を保つ」を含意する。

    正投影図の「長さの比を保つ」には,目的がある。
    その目的は,数学のものではなくて,実用である。
    正投影図は,もともと「射影 (投影)」の数学の主題になるものではない。
    正投影図は,製図法として,長さや角度を記すことを以て意味をもつものである。


    2. 正投影図における<メリット・デメリットのトレードオフ>
    正投影図は,3次元の図形を2次元図形に変えるものであるから無理があり,表現に誤読の余地を含む。 しかし,正投影図をつくるときは,実用が考えられている。 そして,実用を考えてつくっているとは,誤読の余地の問題を併せて処理しているということである。
    誤読の余地を放ったらかしにした体(てい) の正投影図というものは,現実には出て来ないものである。

    しかし,正投影図の授業は,たいてい「表現の読みは一意的でない」をテーマにする。
    そして,「そんな図形をそもそも正投影図にするわけがない」といった図形を,素材にもってくる。
    例えば,つぎのような具合である:


    このような授業を見ることになったら,「この授業者は,正投影図とは何か?を考えたこともなくて授業しているのだ」と思えばよい。

    図形の次元を下げる図法は,無理をやるわけであり,表現に誤読の余地を含むことになる。 ここで無理をするのは,この表現にメリットがあるからである。
    正投影図ないし投影図 (「見取図」) を作成するとは,このメリットと誤読のデメリットのトレードオフを既にやっているということである。

    では,「投影図におけるメリット・デメリットのトレードオフ」の授業は,どういうものになるか?
    つぎを具体的にやるのである:
      「この図形の表現は,正投影図が便利」(メリット)
      「この図形を正投影図で表現するのは,ひどい誤読を招くことになる」(デメリット)
      「この図形は,正投影図をつくってもつまらない/つくる価値がない」


    3.「正面・上面・側面」の意味
    「正面・上面・側面」は,図面作成者が決めることである。
    図形に備わっている「性質」ではない。
    「正面・上面・側面」は,<実用>に照らして決めることになる。

    例えば,円柱の正投影図をもしつくるとなったときは,つぎのようにつくることになる:


    つぎのようにつくる者は,<実用>の考えが抜けている者である:




    4. 正投影図の作成──正投影図を作成できるカラダづくり
    「正投影図」の授業のゴールは,立体の正投影図を自ら作成できるカラダがつくられることである。
    アタマでわかった・できたつもりになってオシマイというのではない。