Up 実用論は「かけ算の順序」を<こだわり>の問題にする  


    実用論は「かけ算の順序」を<こだわり>の問題にする。
    すなわち,「かけ算の順序はこだわる問題ではない」「かけ算の順序にこだわるのは愚」を言う。

    いっぽう,ここで否定されている<こだわり>を生業としているのが,数学である。
    かけ算の順序にこだわるな」を言うことは,「数学はやめよう」を言うことである。

    数学が<こだわり>を生業としているとは,どういうことか。
    数学は,つぎのことを厳格に行おうとする:
    1. 使用する言語を,文法の明確な言語として定める。
    2. 理論生成の核にするルールを定める。
    3. 「含意」のルールを定める。
    4. 含意の導出作業を,核のルールを起点にして開始する。
    なぜ,これを厳格に行おうとするかというと,「厳格」ということに意義を見ているからである。
    翻って,「厳格」の概念に無知ないし「厳格」の意義に関心の無い者は,「厳格」をつまらないこだわりと感じることになる。 そして「厳格」がこだわりにされるところでは,数学は生きられない。

    数学は,理論構築において,実用は見ていない。
    すなわち,理論構築の営みは,「専ら重要な含意を求め,アブストラクト・ナンセンスはやらない」の意識に導かれているとはいえ,たてまえとしては,実用論から独立している。
    実際,「実用から独立」のスタンスが,「既成によって曇らされた眼では見えなかった形式」の発見へ導くことに効く。あるいは,このことが期されている。