Up はじめに  


    算数科の積の立式の問題では,2数を並べる順序が (明示的に,あるいは暗黙に) 問われてくる。 そしてこの順序が,論議/論争される。
    つぎのようなかんじである:

    1. 「飴が2個はいった袋が3つある。飴の個数を求める式は?」
      「2m(メートル) の棒を3本つなげる。この長さを求める式は?」
      の問いに「3×2」と答える生徒を,教師がバツにする (「2×3」ならマル)。
      順序なんか関係ないじゃないか!
      (どうせ,2×3=3×2 なんだし‥‥)

    2. 「タテ2cm,ヨコ3cm の長方形の面積を求める式は?」
      90゜回転したら,タテ,ヨコはそれぞれヨコ,タテになる。
      立式が 2×3,3×2 のどっちかということはない。
      つまり,順序なんか関係ない!

    さらに,この順序の問題は見掛けが簡単なので,子どものテストのマル・バツで親がヒート・アップしやすい。
    しかし,この親が学校に文句を言ってきたり新聞に投書したりみたいになると,これは正真正銘の「モンスター・ペアレント」である。

    実際,「モンスター」とは「行為が規範から逸脱しており,しかもそのことを意識していない者」のことであるが,数学を知らなけば,数学という規範から自ずと逸脱してしまい,しかも逸脱しているとは思わないわけであるから,簡単にモンスターになってしまう。

    そこで,せっかくの「かけ算の順序」論議/論争に水をさす格好になるかも知れないが,本テクストで「かけ算の順序」の数学を改めて押さえることにする。