Up 積の立式における<いろいろ>と<ひととおり>の区別  


    つぎの長方形の面積 (単位 cm2) を求めるときの立式を考えてみる:
    このときは,つぎの倍関係をとらえる:


あるいは  


    cm2 を単位とする数値「?」の立式は,つぎのようになる (積の意味):
      最初の図のように「2倍して3倍」のように構造化したときは,
       「2×3」であり,「3×2」ではない
      後の図のように「3倍して2倍」のように構造化したときは,
       「3×2」であり,「2×3」ではない

    この例では,問題の構造化の仕方を2通り示した。 このように,問題の構造化では,<いろいろ>をやる余地がある。
    しかし,構造化された問題から導かれる2数の積の式は,<ひととおり>である。 2数を並べる順序に,<いろいろ>の余地はない。


    つぎの問題を考えよう:

      入場を待つ人が並んでいる。
      10人ずつ区切って入場させた。
      200回目で全部を入場させることができた。
      入場者の数は,10 と 200 の2数の積で求められる。
      その積の式は?

    積の立式は「倍の合成 (倍の倍)」の構造から導かれるわけだが,この問題での「倍の合成」構造の自然なとらえ方は,つぎのものである:
    そして,この構造化に応ずる積の立式は「10 × 200」である。

    10 と 200 の順序をこれとは逆にした「200 × 10」の立式を導くためには,「200倍して10倍する」の構造図を描かねばならないが,これを描くときは相当屁理屈をこねることになる。


    つまり,問題から「倍の合成」の構造を導くときには<いろいろ>の余地があるが,問題によって,「どちらをやっても五分五分である」とか「この構造化はいかにも無理がある」といったことが起こってくる。