Up 「偶数・奇数」の主題は,「剰余類」 作成: 2012-05-18
更新: 2012-05-18


    自然数に対し,<2で割る>を考える。
    2で割ったときの余りは,0 (「割り切れる」) か1のいずれかである。
    余りを使って自然数を2つに類別できる。

    この2つの類に対する名称が,「偶数・奇数」である。
    翻って,「偶数・奇数」の授業は,《自然数を,2で割ったときの余りを使って類別》を教える授業である。

    この授業につづく授業は,どんなか?
    3だったらどうか?」の授業である。
    《自然数を,3で割ったときの余りを使って類別》が主題になり,《自然数は,余り0,1,2の3つの類に分かれる》が内容になる。

    そして,この進む先は,つぎの形の一般化である:
      《自然数を,nで割ったときの余りを使って類別
       ──余り0,1,2,‥‥,nー1のn個の類に分かれる》


    余りを使った自然数の類別でつくられる類を,「剰余類」と呼ぶ。
    すなわち,「nで割ったときの余りを使った類別」に対し,「nを法とする類別」の言い回しを用い,このときの類に対し「nを法とする剰余類」の言い回しを用いる。

    このように,「偶数・奇数」の数学は,「剰余類」である


    ちなみに,剰余類を導く数学の方法は,例えば「偶数・奇数」だと,
      「2で割った余りを使った類別」
    ではなく,
      「同値関係 m ≡ m′ (mod 2) による類別」
    になる。
    ここで「m ≡ m′ (mod 2)」の意味は,「mーm′ が2の倍数になる mとm′ は,同類」である。

    実際,偶数同士はこの方式で確かに同類となり,奇数同士も同類となる。
    一般に,「nで割ったときの余りを使った類別」は「同値関係 mーm′ (mod n) による類別」と同じであり,「nを法とする剰余類」がこのときの剰余類である。

    読者は,つぎを「nを法とする類別・剰余類」の絵としてもっているとよい:
(n=3の場合)

    数学が「nで割った余りを使った類別」ではなくて「同値関係 mーm′ (mod n) による類別」を択ぶのは,「剰余類」の一般論として集合論の「同値関係・同値類」を使えるようになるからである。
    集合論の「同値関係・同値類」で済んでいることがらは,「剰余類」で繰り返さなくてよいわけである。
    実際,この「省力」は,「構成主義・系統主義」の立場として数学がまさに大事にしているところのものである。