Up はじめに 作成: 2012-05-18
更新: 2012-05-19


    小学算数「整数の性質」は,教員にとって,主題をとらえるのが難しい。
    教員は,主題をとらえられまま,授業をつくる。そして,授業を行う。
    その授業は,当然,主題を外したものになる。

    「整数の性質」の主題のとらえの難しさは,構造的なものである。
    すなわち,数学にすると複数の分野に分かたれる主題が,「整数の性質」の中に混在している。 そして,これらの主題は,密接に関係しあっている。
    「整数の性質」の主題のとらえとして行わねばならないことは,「整数の性質」に含まれている数学を特定しつつ,これらの関係図を描くことである。

    これを作業するには,数学の素養が必要になる。
    そして,この素養は,小学校教員一般に対し期すのは酷となるものである。

    そこで,本テクストを以て,小学算数「整数の性質」がどういう主題であるかを,手短に解説してみることにした。 すなわち,《「整数の性質」に含まれている数学を特定し,これらの関係図を描く(註)》を,本テクストを以て行うことにする。

    「解説」とはいえ,言及される数学は,小学校教員一般にとって,まったく知らないか,ほとんど知らないか,よくは知らないものである。 よって,小学校教員一般を対象にするテクストとしては,内容的にかなり敷居の高いものになっている。
    読者はこのことを承知されたい。



     註 : 「整数の性質」の内容になるものは,標題では「偶数・奇数」と「倍数・約数」の二つである。
    この内容は,複合的である:
    1. 「偶数・奇数」の主題は,「剰余類」である。
    2. 「倍数・約数」の主題は,一つに「公倍数・公約数」である。
      これは,計算の基礎技術として,修得が必要になるものである。
    3. 「倍数・約数」の主題は,一つに「自然数の積因子分析」である。
      この流れで「素数」が主題になる。
    4. 「倍数・約数」の主題は,一つに「環・イデアルに回収」である。
      (「環・イデアルに回収」は,中学数学にもあり,それは《「多項式の因数分解」を「環・イデアル」に回収》である。)
    そして,以上の主題は,互いに深く関係し合う。