Up 小学算数の「比例」と中学数学の「比例」の関係  


    小学算数での「比例」の定義は「f(×n) = f()×n」である。
    ところが,中学数学では「y=ax」が「比例」の意味になる。
    「f(×n) = f()×n」が「y=ax」に転じるしくみを,ここで押さえておこう。

    簡単のために,fを「均質な針金の長さと重さの比例関係」で考える。
    ──「f(×n) = f()×n」の意味は,「長さのn倍に,重さのn倍が応じる」である。



    いま,長さは cm で,重さは(グラム) で測ることにする。
    このとき,長さと重さの対応fから数値の対応が導かれる。


    さらに,このfでは cm に 2が対応しているとしよう。
    この対応には,どんなきまりが見いだせるか?
    長さの数値に2倍したものが重さの数値になる──すなわち,長さの数値nには重さの数値n×2が対応する:
      f(cm×n) = f(cm)×n = (×2)×n = ×(2×n) = ×(n×2)


    中学数学の「y=ax」に引き寄せていえば,「y=2x」である。


    同じfに対し,こんどは長さは(メートル) で,重さは kg で測ることにする。
    すると,数値の対応の式は「y=0.2x」になる:
      先ず,f で には 0.2kg が対応する:
      f() = f((cm×100) = f(cm)×100 = (×2)×100 = ×(2×100) = (kg×1000−1)×(2×100) = kg×(1000−1×2×100) = kg×0.2
      そして,数値nには数値n ×0.2 が対応する:
      f(×n) = f(m)×n = (kg×0.2)×n = kg×(0.2×n) = kg×(n×0.2)



    「y=ax」のaは,選ぶ単位に依存しているわけである。 ──アタリマエだが,ここで明示的に押さえておく。
    そこで,cmを単位にしたときの「y=2x」の「2」は「cmに関するfの表現数」,kgを単位にしたときの「y=0.2x」の「0.2」は「kgに関するfの表現数」,とそれぞれ呼ぶのがふさわしい。 そして中学数学では,これを単に「比例定数」と呼んでいるわけである。

     註 : 線型代数を学習したことのあるひとなら,この話が「線型写像の表現行列」と対応していることを察知するだろう。