Up 「立式・計算」に3つの方式
──「ペンキ塗り」型, 「長方形を1と見る」型, 「数直線」型
作成: 2011-12-01
更新: 2012-02-01


    「分数のかけ算・わり算」の「立式・計算」の現行指導は,つぎの3つの型が見出される:
    1. 「ペンキ塗り」──塀に見立てた長方形を分割操作
    2. 「長方形を1と見る」──1と見た長方形を分割操作
    3. 数直線」──<量/線分を1と見る>でつくった比例図式を操作
    ここで「3つの型が見出される」の意味は,「どれかの型が一つ択ばれ,そしてこれが一貫して用いられる」ではない。 現前は,指導局面によってどれかの型が部分的に都合よく用いられるとか,これらの型が混在して用いられるというふうになっている。


    (1) 「ペンキ塗り」型

    分数のかけ算・わり算の公式を導入する授業では,ペンキ塗りの文章題を用いるのが常套であった。
    すなわち,この指導法では,分数のかけ算・わり算は<長方形をタテ・ヨコ2方向に切る>で説明される。 そこで,<長方形をタテ・ヨコ2方向に切る>ができる素材が必要になる。 そして,ペンキを塗る塀がそれだというわけである。

    しかし,<長方形をタテ・ヨコ2方向に切る>は,分数のかけ算・わり算の文章題一般に使えない。──例えば,つぎの文章題には使えない:
      「2/3 kg の 4/5 は何 kg か?」
    「2/3 kg は何 kg の 4/5 か?」

    翻って,ペンキ塗りの文章題の解法をもって分数のかけ算・わり算の公式を説明することは,《一つの特殊を以て全てを説明したことにする》の騙しをやっていることになる。
    教育的方便としては,これでよいこともある。
    一方,最初から「ペンキ塗り」とは別の型でやっていくことが考えられる。
    現行では,「長方形を1と見る」型と「線分を1と見る」(「数直線」) 型がこの場合になる。


    (2) 「長方形を1と見る」型

    ペンキ塗りの文章題を用いる指導法は,分数のかけ算・わり算を<長方形をタテ・ヨコ2方向に切る>で説明する。 このときの長方形は,「ペンキが塗られる塀」のイメージである。 しかし,このイメージを引き摺っていると,分数のかけ算・わり算の文章題一般に使えない。

    そこで,<タテ・ヨコ2方向に切る>を行うための長方形を,「1と見る」を使って導入する:


    そして,この「1と見た長方形」に対して,<分数表現>となる分割操作をしていく。


    (3) 数直線」型

    これは,つぎの方法である:
    1. 「数直線」の図として,「比例関係」の図式をつくる。
    2. この図式の中で,一方の量の倍関係の図式を導く。
    3. かけ算・わり算の式を,量の倍関係の図式に対する<「比の3用法」の適用>によって導く。
    4. かけ算・わり算の計算のきまりも,同じ図式を用いて導き出す。

    数直線」型は,本テクストではなく,『「数直線でかけ算・わり算」は,わかるのがおかしい』で取り上げる。