Up 「分数のわり算」──立式と計算 作成: 2012-01-31
更新: 2012-01-31


    「1と見る」型の「分数のわり算」の授業は,つぎの流れになる:

    1. つぎの文章題から始める:
        「4/5 秒に 2/3 m 進む。
         1 秒では 何 m 進むか?」

    2. つぎの立式を,生徒に受け入れさせる:
        何 = 2/3 ÷ 4/5

    3. 長方形 (特に,正方形) を描き,「これを1と見ましょう」と生徒に言う──この言い回しを生徒に受け入れさせる:


    4. 「2/3 ÷ 4/5」の「2/3」を,「1の 2/3」がこれの意味であるとして,つぎのように作図する:


    5. 「2/3 ÷ 4/5」を「2/3 は何の 4/5 か?」と読ませ,「2/3 は何 の 4/5」をつぎのように作図する:


    6. この図から,「1の 2/3 は,1 の (2 × 5)/(3 × 4) の 4/5」を読み取らせる。
      そして,つぎを結論する:
        2/3 ÷ 4/5 = (2 × 5)/(3 × 4)

    7. (2 × 5)/(3 × 4) = 2/3 × 5/4 であることから,つぎを結論する:
        2/3 ÷ 4/5 = 2/3 × 5/4

    8. つぎのことばにまとめる:
      分数のわり算は,
       割られる方の分数に,割る方の分数をひっくり返してかける。


    以上の手順を<数学の推論>として採点するならば,つぎの2つが減点される:
    ステップ2で抜かされている論証は,「ペンキ塗り」型のところで示したものと同様である。すなわち,つぎのようになる:


    ところで,上の文章題は,「分数のわり算」の文章題に2タイプあるうちの,一方のタイプのものである。
    つぎが,もう一つのタイプである:
      「1 秒に 4/5 m 進む。
       何秒で 2/3 m 進むか?」
    「比の3用法」の言い方を用いるならば,最初の文章題は「比の第3用法」タイプ,そしていま示した文章題は「比の第1用法」タイプである。 そして,「比の第1用法」タイプの場合,長方形を分割するやり方は,使えない。
    よって,「分数のわり算の立式・計算」を「1と見る」型で授業するときは,《文章題に「比の第1用法」タイプがあることを,生徒に対し隠す》を確信犯的にやることになる。