Up <量としての数> 作成: 0000-00-00
更新: 2012-02-25


    量(系) Qは,構成要素の数(系) Nによって,構造が定まる。 すなわち,構成要素にしている数(系) が同じである量(系) は,構造が同じ (同型) である。
    例えば,長さ,重さに対する数の倍を分数倍で考えているとき,長さ(系) と重さ(系) は同型である。
    長さに対する数の倍を自然数倍で考え,重さに対する数の倍を分数倍で考えているとき,長さ(系) と重さ(系) は同型でない。

    量(系) Qの構造が構成要素の数(系) Nによって定まるのは,どのようなしくみによるのか。
    数(系) Nの構造を組み替えて,量(系) をつくることができる。 すなわち<量としての数>がつくられる。 そして,Qはこの<量としての数>と同型になっている。

    これが,<量としての数>の概要である。
    以下,この内容を明示的に述べる。


    (1) <量としての数>

    数(系) (N, +, ×) を素材にして,
        ( (N, +), ×, (N, +, ×) )
    をつくる。
    これは,量(系) の構造をもつものになる──すなわち,量(系) になる:
    • (N, +) の要素が,「量としての数」
    • (N, +, ×) の要素が,「量としての数」の倍作用素──すなわち「量の比」


    (2) <量としての数>は,量の普遍対象

    を,量Qの零でない要素とする。Qの要素と数の対応:
      f : × n (n∈ N)
    は,( (Q, ), ×, (N, +, ×) ) と ( (N, +), ×, (N, +, ×) ) の間の同型対応になる。



    すなわち,( (N, +), ×, (N, +, ×) ) は,Nの要素を倍の作用素として考えるすべての量 ( (Q, ), ×, (N, +, ×) ) にとって,この量の構造を示すものになっている。
    このことは,数学の「普遍対象 (universal object)」のことばを用いて,つぎのように表現される:
      ( (N, +), ×, (N, +, ×) ) は,(N, +, ×) の要素を倍の作用素として考える量の普遍対象。


    「普遍対象」は,いわば,イデア論の「イデア」である。
    ( (N, +), ×, (N, +, ×) ) は <Nを作用域とする量>のイデアであり,イデア ( (N, +), ×, (N, +, ×) ) の降りてきたものが <Nを作用域とする量>である。
    ──実際,数学で自体的に存在するのは,数であって,量ではない。


    註: 線型空間論で「体K上のn次元線型空間E」を少し進んだところで,
      「Kからの線型空間Kの導出」
      「線型空間EとKの同型」
    の話が出てくるが,これが,いま論じている「量としての数」「量の普遍対象」の数学と対応している。
    ただし,「線型空間」と「量」は同じではない
    • 自然数 (, +, ×) に対する量 ( (, +), ×, (, +, ×) ) は,線型空間ではない。
    • スカラが実数の2次元実線型空間 ( (, ), ×, (, +, ×) ) は量ではないが,複素数をスカラとしたときの1次元の線型空間 ( (, ), ×, (, +, ×) ) は,( (, +), ×, (, +, ×) ) と同型なので,量である。

      ( 『「数とは何か?」への答え』 )