Up 体系バラバラ主義は,モンスターをつくる 作成: 2008-03-02
更新: 2008-03-02


    学校教育論には体系主義のものと体系バラバラ主義のものがあって,両者の勢力関係によって,学校教育のシステムや内容が振り子のように行ったり来たりする。
    最近の例では,「ゆとり教育」は体系バラバラ主義である。

    体系バラバラ主義は,つぎのような形で現れる:

    • 実用・実際主義
    • 合科主義
    • コア・カリキュラム
    • 基礎学習コース
    • 生活単元
    • 総合学習
    • 体系バラバラ的問題解決学習
    • 体験学習
    • インターンシップ
    • 地域フィールドワーク
    • ボランティア


    体系バラバラ主義が国の教育方針としてトップダウンで教育現場に降りてくると,教育現場はどうなるか?
    「何をしてよいかわからない」になる。
    よそで何をやっているか見回したり,手探りでなにかかにかやってみる。 で,ひどくつまらないことを,ダラダラやってしまう。

    これに子どもが付き合わされる。
    大人への成長は起こらず,子どものまんま。
    モンスターの大発生。


    体系バラバラ主義を唱えたり,トップダウンで降ろす者は,体系バラバラの確たる方法を自ら持っているわけではない。 自分が笛を吹けば,みんなが上手に踊り出すと思っている。

    この期待は,見事に外れる。
    そして,モンスターの大発生を非難されて,彼らは舞台から降りる。

    彼らは舞台に上りそして降りただけだが,この間,モンスターが大量につくられる。
    モンスターにされた子どもについては,不条理だが,運が悪かったということで済ませるしかない。
    たまたま戦争の時代に子どもの時を過ごすことになった不幸と同型である。


    体系バラバラ主義の何が問題かと言うと,教育を簡単に考え過ぎるということである。 あるいは,教育をわかっていないということである。
    翻って,勉強というものをよくわかっていない者が,体系バラバラ主義にとびつく。 体系的な学問で自ら鍛錬した者は,つまみ食いみたいな形では<成長>が起こらないことをよく知っているので,決して体系バラバラ主義にはとびつかない。

      中には,つぎの考えから確信犯的に体系バラバラをとる教育者も存在する:
        みながみな勉強について行けるわけではない
      できない子どもにも授業を何か意味あるものにしてあげなくてはいけない
      しかしこのような者は,ケース・バイ・ケースで体系バラバラを考える。 学校教育全体を体系バラバラ主義で主導するという考えはもたない。


    体系バラバラ主義は,学校現場が何をやってよいかわからずそしてつまらないことをやるだけになるので,モンスターの大発生を導く。──このように述べてきた。
    しかし,これは事の一面に過ぎない。 核心はつぎの方にある:

      体系の学習が<成長>を実現する。
      ところが,体系バラバラ主義は,体系の学習を軽んじる風潮をつくる。
      学校で生徒は体系の学習から離れるようになり,<成長>機会を自ら捨て,モンスターになる。