Up 理論的方法を使える/使う 作成: 1998-12-19
更新: 2007-08-09


    理論的方法の例として,「特殊から一般へ」をここで取り上げる。

    「特殊から一般へ」はつぎのように解釈するよい:

    1. まず,ひとは「特殊から一般へ」のようにしか学習できない。

      「一般化」は趣味の問題ではない。 教科を道具として有効にするための方法の一つ。
      ただ,この形の道具のありがたみは,上級者にしかわからない。 一般形は,初級者にはノイズにしか感じられない。 このノイズがヴィヴイッドなリアルとなり,これの射程,理由,そしてよさがわかるためには,多くの経験をつむ必要がある。
      どのような「経験」か?「特殊から一般へ」しかない。

    2. つぎに,学習は,生成的に理解する(「少しを知って,その都度必要なものを生成する」)という形でしか,成功しない。 「ものをためこむ」形の学習(「記憶学習」)は早晩破綻する。
    そしてこのときの「少し」は,「生成的な特殊」。

    • 例えば,「線型代数」を理解するには,「量」を「特殊」としてもっていれば十分。 高校数学の「線型代数」のすべてのネタは小学算数の「量と数」の中にある。
    • 誤解はないと思いうが,念のため:「少し」のイメージは「公理」ではない。


    の意味と応用は,相応じて,一般化 (拡張) されていく。 このとき,のひとつのイメージにしばられていると,その形のより高い段階の学習へ進めなくなる。
    「特殊から一般へ」の学習は,簡単ではない。 「特殊」に対する理解が柔軟でなければ「特殊から一般へ」は進めないが,ひとは「特殊」にフィックスしてしまう。
    ここに,指導者の能力,指導者の存在理由,が問われてくる。

    例:
    1. 自然数の学習では,数の商(除法)の応用として「分ける」を習う。
      しかし,この「÷」=「分ける」のイメージにとらわれると,分数の商(除法)の学習に進めなくなる。

    2. 多くの高校生が,意味不明のまま「行列」を学習している。つぎのことを知らずに学習している:

      • 「行列」は,次元の拡張(1から2への拡張)にともなう「比例定数」の意味拡張。
      • 「2次元ベクトル空間」は,小学校で習った「量」の拡張。
      • x-y 座標は,「ものさし」の拡張。
      • 「1次変換」は「比例関数」の拡張。