Up 出口論主流の意義は,指導課程づくりとは別のところに 作成: 2009-11-21
更新: 2009-11-21


    「問題解決」は,1980 年の NCTM Agenda に登場してから 30年になろうとしているが,指導課程を現すに至っていない。 取り組みが不足していたというわけでもない。 実際,「問題解決」は,この間,数学教育の研究会・研究実践のつねに中心にあった。

    出口論は,ここしばらく,OECD-PISA が主流である。
    「問題解決」はどうなったのか?
    OECD-PISA と「問題解決」の違いは?
    両者は根っこのところでは同じである。
    実際,「問題解決」で出口論をやってきた者は,OECD-PISA の出口論にスムースに移行できるだろう。

    そこで,出口論とはそもそも何なのか?を改めて考えてしまうことになる。


    出口論は,「これに対応する指導課程を,これからいっしょにつくろう!」を内容に含んでいる。
    ここで注目すべきは,<対応する指導課程>の存在は,論点にされないということである。 <対応する指導課程>の存在することが,当然視されているか,あるいは当て込まれている。

    出口論は,数学教育学でいつも最も盛んな領域になる。 しかし,<対応する指導課程>の実現は,遅々として進行しない。 そして,実現しないうちに,新しい出口論の登場になる。 しかも,新しくなっているのは装いであって,根のところは変わっていない。

    この現象は,つぎのことを示唆する:
     出口論を考える全く別の視点が必要である。
     出口論の意義/機能は,指導課程づくりとは別のところにある。


    出口論は,ゴールを示すという形で,ムーブメントをつくる。
    一方,ムーブメントはそのゴールに到達する必要はない。 ゴールが存在する必要もない。
    実際,ムーブメントが長く持続するのは,すぐにも手が届きそうに見えるが実際には到達が無いゴールの場合である。

    出口論のこの在り方は,不思議でもなんでもない。
    社会・経済は,ムーブメントを創出するものの出現を求め,そしてそれのつくりだすムーブメントにしばらく乗る。 新しいムーブメントが起こっては消える。 これが,社会・経済のダイナミズムである。

    現前は,出口論の機能が「経済効果」「教育界の行動励起」の部分で圧倒的に大きいことを示している。 そこで翻って,つぎのような考え方も成り立ってくる:
      「出口論は,経済効果,教育界の行動励起に機能している。
     出口論の本質,それは社会的・経済的ムーブメントの創出。
     出口論は,出口に応ずる指導課程が存在することを要しない。