Up 均衡の系──複雑系 作成: 2014-02-01
更新: 2014-06-16


    ひとが「学校数学」を論じることは,学校数学の「向上」を論じることである。
    実際,学校数学は「向上」がずっと唱えられ続けてきた。「向上」の試みが行われ続けてきた。
    しかし現実は,向上していない。
    これは,学校数学が,「する」(目的・実践) を考える一方で,「なる」を考えるものだということを示している。

    「なる」は,「均衡相の実現」である。
    その「均衡」は,「系の要素の均衡」である。
    学校数学を「なる」の視点で捉えることは,学校数学を「系」の視点で捉えることである。

     註 : 本論考の主題化する「なる」は,「現成」(「現前の回収が現前」) である。
    「その都度成る」であり,そしてこれは「その都度,これの構成要素の均衡相」である。

    そして,系としての学校数学は,さらに複雑系として見るものになる。
    学校数学を複雑系として構成しているものは?

    一人の授業者から出発してみよう。
    その者を「授業者」に実現するのに係わっているすべてのものが,この系の要素である。
    例えば,「衣・食・住」「交通」「通信」は,この系の要素である。
    「学校」「教員免許制度」「学校教員養成課程」「教育行政」は,この系の要素である。
    「教科書」「教育産業」は,この系の要素である。
    「研究組織」「学会」「研究大会・研究授業」は,この系の要素である。

    授業を受けている一人の生徒から出発してみよう。
    その者を「授業の生徒」に実現するのに係わっているすべてのものが,この系の要素である。
    例えば,「親」「家庭」「育児」「教育」は,この系の要素である。
    「学校制」「選択的進路」は,この系の要素である。
    「学校・教室」「学校の外 (環境)」は,この系の要素である。
    「勉強」「課外活動」「遊び」は,この系の要素である。

    こうして,結局すべてが学校数学を複雑系として構成しているものになる。
    関係の強弱,関係の直接・迂遠の程度によって,個々の違いを立てるのみである。

    学校数学は,このくらい系を拡げて考えるものか?
    「なる」を考えるときは,そうである。