Up 非科学 作成: 2010-08-04
更新: 2013-09-16


    本論考が課題として立てる「形式」の論述は,反表象主義 (反合理主義) である。
    そしてこれは,「非科学」をやるということである。
    科学をやることは,表象主義をやることだからである。

    実際,「形式陶冶」は,数学教育学が基本/主要主題として主題化しなければならないものであるが,科学にのらない。
    科学にのらないのは,長い時間スパンの経験を拠り所にする経験論だからである。

    一般に,数学教育学として実際的な論を起こそうとすれば,それは非科学になる。
    数学教育は複雑系である。
    この複雑さに対するとき,科学は単純系である。
    数学教育は科学にのらない。

    翻って,非科学には,科学の限界 (貧困・低次元) を表現する/示すという意義がある。
    実際,非科学との対照がなければ,科学は己の限界 (貧困・低次元) を自覚できない。

    非科学は,科学からのエスケープではない。
    対象をそのままの相で扱うことが,「対象=複雑系 -対- 科学=単純系」の構図を以て,非科学になるときには,科学でこの対象を回収しようとすることは,「対象からのエスケープ」の意味になる。

    本論考のスタイルで,「学校数学=形式陶冶」論を数学教育学の中で行おうとすることは,「学術」の中に「非科学」の場所を持とうとすることである。