Up 「形式陶冶論争」の類型 作成: 2013-06-11
更新: 2013-07-07


    本論考は,「学校数学の勉強は何のため?」の問いを改めて取り上げ,この問いに対する答えを主題化する。
    そして,つぎの立場を択ることを,論考の方法にする:
      1. 学校数学の勉強は何のため?」の答えは,生徒の側からの「学校数学の勉強は自分にどんな得がある?」の問いに対する答えが,本質的となる。
      2. さらにこの答えは,すべての生徒に学校数学の勉強は,あなたに得がある」と答えるものである。

    先ず,「学校数学の勉強にどんな得がある?」の答えの形式を定める。
    単純に,つぎを形式とする:
      1. 1 を勉強する
      2. 2 を身につける
    このとき,答え方は,つぎの3類型になる──「形式陶冶」の2類型と「数学実用主義」:
2
形式 数学
1 形式 形式 - 形式
(形式直接陶冶主義)
───
数学 数学 - 形式
(形式間接陶冶主義)
数学 - 数学
(数学実用主義)

    さらに,すべての生徒に対する「学校数学の勉強は,あなたに得がある」の答えとなるものかどうかを,これらに見ていく。
    このとき,数学実用主義が消えて,「形式陶冶」の2類型 (形式直接陶冶主義と形式間接陶冶主義) が残ることになる。


    各類型は,「学校数学の勉強にどんな得がある?」の答え方をめぐる異なる立場を表す。
    ここで,この類型間の対立 (「論争」) を考える。

    対立の組み合わせは,3類型間だと,つぎの6通りになる:
形式直接陶冶主義 形式間接陶冶主義 数学実用主義
形式直接陶冶主義 形直 × 形直 形直 × 形間 形直 × 数実
形式間接陶冶主義 ── 形間 × 形間 形間 × 数実
数学実用主義 ── ── 数実 × 数実
    また,「形式陶冶」の2類型間だと,つぎの3通りになる:
形式直接陶冶主義 形式間接陶冶主義
形式直接陶冶主義 形直× 形直 形直 × 形間
形式間接陶冶主義 ── 形間 × 形間

    ここでは,同じ類型同士の対立も,組み合わせのうちに数えた。
    この対立は,同一類型のなかで互いに差別化し優位を争うというものである。
    ──ちなみに,他の類型の者がこれを評することばが,「目くそ鼻くそ論争」である。


    学校数学の勉強は何のため?」の答えをめぐる異なる立場の対立は,「形式陶冶論争」の外観を呈する。 そして,「すべての生徒にとって」が共有されているときには,対立しているのは,形式直接陶冶主義と形式間接陶冶主義である。
    実際,論理として,このほかではないのである。──このことを,ここでは示した。