Up 「学校数学の目的」 作成: 2013-07-06
更新: 2013-07-06


    ひとは,存在に対しては,「存在理由があって存在する」の見方をする。
    学校数学も,こうなる:
      学校数学が存在しているのは,存在理由があるから。

    学校数学は,インプットに加工してアウトプットする機能である。
    この機能が,学校数学の存在理由にされる。
    併せて,アウトプットは「成果」と読まれ,成果が学校数学の存在理由にされる。

    「成果」の概念をもつことは,「成果を得る・得ない」の概念をもつことである。
    そして,「成果を得る」を内容とする「学校数学の目的」が立てられる。
    併せて,学校数学の目的達成が,学校数学の存在理由にされる。

    こうして,学校数学の存在に対しては,「存在理由」が先取され,「目的」が先取される。 そしてここでは,存在理由と目的が同じものになる。

    これに対し,本論考は,学校数学を所与と定める。
    そしてこの立場から,「存在理由/目的」を,「存在の機能的含蓄」に言い換えるものである。

    学校数学の存在理由/目的 (機能的含蓄) は,つぎの4つをセットにして述べるのが一般的である(註)
      1. 形式陶冶材として数学と格闘させる
          (「数学の勉強は,成長の要素」)
      2. 実用物として数学を持たせる
          (「数学の実用は,生活の要素」)
      3. 教養として数学を身につけさせる
          (「数学の教養は,文化の要素」)
      4. おもしろいものとして数学にはまらせる
          (「数学のたしなみは,人生の要素」)

    翻って,学校数学の機能不全は,つぎが徴候になるというわけである:
      1. 成長の低迷
      2. 生活の低迷
      3. 文化の低迷
      4. 人生の低迷




     註 : 中原(2000,pp.48-51)では,
     A.算数・数学教育の陶冶的目的
      A1.人格・価値観・態度などの育成
       A11.真理・正義を重んじる人間の育成
       A12.合理性・計画性を重んじる人間の育成
       A13.主体性・自主性を重んじる人間の育成
       A14.理論・形式などの美による美的情操の育成
      A2.思考力・表現力・判断力などの育成
       A21.理論的な思考力・判断力などの育成
       A22.抽象的・一般的な思考力・判断力の育成
       A23.記号的・図的な思考力・表現力の育成
     B.算数・数学教育の実用的な目的
      B1.日常生活に役立つ知識などを身につける。
      B2.職業に役立つ知識などを身に付ける。
      B3.より進んだ数学,他教科の理解に役立つ知識などを身につける。
      B4.試験に役立つ知識などをみにつける。
      B5.コミュニケーションに役立つ知識などを身につける。
     C.算数・数学教育の文化的目的
      C1.算数・数学という文化を享受する。
      C2.算数・数学という文化を継承し,発展させる。
      C3.教養として算数・数学を身につける。

    引用文献
    中原忠男 (2000) 算数・数学教育の目標・目的. 日本数学教育学会誌 第82巻, 第7·8号 (特集号), pp. - .