Up 要 旨 作成: 2013-07-15
更新: 2013-07-15


    学校数学は一つの生態系である。(『「学校数学=生態系」論』)
    系は,数学では「空間」ということになる。

    数学では,空間を集合と構造で考える。
    集合に構造の入ったものが,空間である。
    構造は,一次的には,要素間の関係である。
    構造は,さらに複雑に考えられるものになる。
    即ち,部分空間と要素の関係が考えられてくる。

    集合としての系の要素は,個である。
    そこで,系の構造は,一次的には,個の間の関係性である。
    系からは,部分空間として,下位の系が多様に発生する。
    系の構造には,これらの下位の系と個の間の関係性も入ってくる。


    生態系において,個は「特個」である。
    「特」の内容は,つぎの二つである:
    1. 所与性
    2. 偶然性

    個の生起は,所与である。
    個は,己の生起については,関われない。
    これが,「所与性」である。

    また,個の生活は,その都度の偶然で構成される。
    偶然には,個の関われない次元がある。
    これが,「偶然性」である。

    個は,己の所与を,自分のその後の生き方の中で,意味づける。
    個は,偶然を,自分がその後の生き方の中で,意味づける。
    そしてこの意味づけは,その都度の意味づけであり,意味づけの変更である。
    即ち,「塞翁が馬」の謂うところである。

    個は,「特個」であるが,社会性をもつものになる。
    ──「大数の法則」が,これのメカニズムである。

    即ち,個の「特」は,数限りなくある。
    個は,一つひとつの「特」では,互いの違いを現す。
    しかし,数限りなくある「特」の積分では,互いに近い値を示し,「みな同じ」を現すふうになる。