Up 「オートポイエーシス」 作成: 2014-09-10
更新: 2014-09-21


    <系>の現前は,<個>の営みがその都度定める。
    「<個>の営み」は,「自分の位相を<自分以外>に対して調整する」である。
    個それぞれが,この調整を行う。
    その結果は,「「自分の位相を<自分以外>に対して調整する」が再び必要になる」である。

    <系>のスケールでこの模様を観れば,「<系>は,その都度自分自身に反応し,自分を変える」に見える。
    これは,自分を瞬間瞬間飲み込むウロボロスの絵図である。

イメージ:ムクドリの集団飛行

    系に対するこのような見方に,「オートポイエーシス」がある。
    「オートポイエーシス」は,系のウロボロス構造を,「self-referrential」「自己維持」「自己組織化」「自己画定」等のことばを用いて説明する。
    「オートポイエーシス」は,「系─個」の存在論を行うものである。



    「オートポイエーシス」のシステム論は,ウンベルト・マトゥラーナ (Maturana) とフランシスコ・バレーラ (Varela) の生命システム論が出自である。
    この考えは,ニクラス・ルーマン (Luhmann) の社会システムへの応用によって,分野横断的に広く知られるところとなる。

    オートポイエーシス的システムは,およそつぎのように特徴づけられる:
      1. 円環的な構造 (自己回収的 self-referrential)
      2. 自己による境界決定 (自己画定的)
    これは,「現前の回収が,即ち現前」ということであり,「ウロボロス」がこれのイメージになる。

    「自己回収的」「自己画定的」からは,それぞれつぎのことが導かれる:
      「自己維持のみがその機能」
      「入力と出力を持たない」
    こうして,オートポイエーシス的システムは,「是非/進歩」と無縁である。


    なお,細かいことをいうと,マトゥラーナ&バレーラは「オートポイエーシス」を生命システムの必要十分条件にする。 よって,この概念を生態系や社会システムに転用するのは,本来,マトゥラーナ&バレーラの退けるところとなる。

    以下に,マトゥラーナ&バレーラのことばを引く:

    Maturana, H.R. & Varela, F.J. 1972.
      "Autopoiesis: the organization of the living"
      In 河本英夫訳 (1991) 『オートポイエーシス ― 生命システムとは何か』, 国文社.

    (i) オートポイエティック・マシンは自律的である。
    それがどのように形態を変えようとも,オートポイエティック・マシンはあるゆる変化をその有機構成の維持へと統御する。‥‥
    (ii) オートポイエティック・マシンは個体性をもつ。
    すなわち絶えず産出を行い有機構成を普遍に保つことによって,観察者との相互作用とは無関係に,オートポイエティック・マシンは同一性を保持する。‥‥
    (iii) オートポイエティック・マシンは,特定のオートポイエティックな有機構成をもっているので,そしてまさにそのことによって,単位体を成している。
    オートポイエティック・マシンの作動が,自己産出のプロセスのなかでみずからの境界を決定する。
    (iv) オートポイエティック・マシンには入力も出力もない。
    オートポイエティック・マシンとは無関係な出来事によって攪乱が生じることがあるが,このような攪乱を補う構造変化が内的に働く。 ‥‥これらの変化は,オートポイエティック・マシンを規定する条件である有機構成の維持につねに従属している。‥‥
    (pp.73 - 75)