Up 「コナトゥス」(スピノザ) 作成: 2014-09-21
更新: 2014-09-21


    いま,ムクドリの集団飛行を考える:


    <個>の振る舞いは,「自己保存への努力 (conatus sese conservandi)」である。
    そしてこれが全体として,集団飛行という系を現す。

    スピノザの「コナトゥス」は,つぎの存在論である:
      定理四  いかなる物も、外部の原因によってでなくては滅ぼされることができない。
      定理五  物は一が他を滅ぼしうる限りにおいて相反する本性を有する。言いかえればそうした物は同じ主体の中に在ることができない。
      定理六  おのおのの物は自己の及ぶかぎり自己の有に固執するように努める。
      定理七  おのおのの物が自己の有に固執しようと努める努力 (conatus) はその物の現実的本質にほかならない。
      定理八  おのおのの物が自己の有に固執しようと努める努力 (conatus) は、限定された時間ではなく無限定な時間を含んでいる。
      (『エチカ』第3部)

    「コナトゥス」の論に,<個>に対するところの<系>は,出て来ない。
    しかし,「コナトゥス」の存在論は,反照的に,「<個=コナトゥス>の<系>」を観じていることになる。
    よってここに,「系─個」存在論の一類型として取り上げるものになるわけである。

    ちなみに,「コナトゥス」の存在論における<個>の有り様は,「決められていて,かつ自由」である。
    スピノザの「倫理学」は,これを基調と定めて読むものになる。