Up 「単純系」と「複雑系」の違い 作成: 2015-11-05
更新: 2015-11-05


    数学教育学を以て科学しようとする「数学教育」は,複雑系である。

    「複雑系」の反対は,「単純系」である。
    対立するものは,系の捉え方──方向が対称的な二つの捉え方──である。


    「単純系」「複雑系」は,系を「集合・要素」で捉えるところまでは,同じである。
    つぎの「要素間関係」の捉えのところで,違ってくる。

    「単純系」は,「要素間関係」を「空間的位置関係」の意味の「構造」で捉える場合である。
    単純系の科学は,構造の探求である。
    <現前に当てはまる構造>を定立できたら,この科学は成功である。

    「複雑系」は,「要素間関係」を「力の相互作用」で捉える場合である。
    「要素の相互作用が生成するところのもの」が,系の捉え方になる。
    複雑系の科学は,要素の相互作用の探求である。
    <現前のシミュレーションを生成する相互作用>を定立できたら,この科学は成功である。


    「単純系」は,「空間的位置関係」の捉えから入る。
    「空間的位置関係」を捉えたら,これの「微分」で,「力の相互作用」が得られる。
    「複雑系」は,「空間的位置関係」を求められない場合であり,「力の相互作用」の捉えから入る。
    「力の相互作用」を捉えたら,これの「積分」で,「空間的位置関係」が得られる。

    「単純系」と「複雑系」の方法的違いは,つぎのように言い表せる:
      「単純系」: 外延的・全体的 (global)
      「複雑系」: 内包的・局所的 (local)
    「内包的・局所的」が「複雑系」の方法となるのは,《「外延的・全体的」はまったく無理だが,「内包的・局所的」ならせめて手は掛かる》が理由である。

    もっとも,「複雑系」の場合の「積分」は,「コンピュータ・シミュレーション」を方法にして可能になるものである。
    高速コンピュータが無ければ,複雑系科学はそもそも始まらない。

      「力の相互作用」の記述は,要素 (個) のモーメントの記述である。
      個は,自身のモーメントの発現として,自由運動する。
      個の自由運動は,相互に衝突する。
      個の自由運動は,互いに他を制約する。
      この相互作用の時々刻々の結果が,個の位置である。
      コンピュータ・シミュレーションは,個のいまの位置からつぎの位置を算出する。
      この計算を重ねるのが,「積分」である。
      「この先」は,「いま→つぎ」を積み上げて求める他ない。
      これを可能にしたのが,高速コンピュータである。