Up 「連作障害」 作成: 2015-11-06
更新: 2015-11-06


    栽培学の主題には,「数学教育」に転用できるものが多くある。
    例として,「連作障害」を挙げる。

    品種Aを栽培する。
    Aに特化して寄生する土壌微生物が,段々と集まってくる。
    この間,Aも成長し,寄生生物に対する抵抗力もついていく。
    寄生生物にさほど害されずに作物として育ち,収穫となる。
    同じ土壌で,続けてAを栽培する。
    土壌には,Aの寄生生物が最初から待ち構えている。
    幼いAは抵抗力がないから,寄生生物にやられてしまう。
    これが,「連作障害」である。

    この「連作障害」を「数学教育」に転用すると,どうなるか。
    栽培学が「連作障害」を主題にする形は,「連作障害があるから,連作をしない」である。
    数学教育は「連作」であり,「連作障害があるから連作をしない」にはならない。
    数学教育学が「連作障害」を主題にする形は,「数学教育は連作障害を伴う」になる。

    「連作障害」の「土壌」は,教員,教室,学校等々と,いろいろなレベルで考えられる。
    実際,これらの変化は,それぞれ「土壌の変化」として,「連作障害」と表裏に考えるものになる。


    例.学校への ICT 導入
    数学教育に,ICT が導入される。
    教師は活用方法を手探りしながら,段々と使っていく。
    数学学習の方法は,学習一般がそうであるが,「カラダを使う」である。
    「ICT の利活用」は,「カラダを使う」を閑却する。
    しかし,「ICT の利活用」の進行が緩やかなので,この間,生徒は「カラダを使う」が中心の数学学習で成長することができる。
    「ICT の利活用」にさほど害されずに,卒業する。
    しかし,いまから入学する者には,「ICT の利活用」が最初から待ち構えている。
    生徒の数学学習は,「ICT の利活用」に害される。
    「連作障害」というわけである。
      『ディジタル教材の考え方』