Up 品種の少数化 作成: 2015-11-16
更新: 2015-11-16


    狩猟採集の時代は,食べられる植物は食糧にされた。
    したがって,食糧になった植物の種は,多い。

    いまの時代は,食糧植物は,スーパーに並んでいる食品植物がそれである。
    食糧植物の品種は,ひどく少数である。

    商品経済では,食糧植物の品種の数は,ますます少なくなる。
    商品経済は,生産・流通・消費のコスト・パフォーマンスがすべてに優先する系だからである。

    食事の内容の多様性は,食品の多様性を思わせるが,そうではない。
    食事の内容の多様性は,食品の多様性ではなく,調理の多様性である。


    人材は,消費される商品である。
    「消費」を「食う」に読みかえれば,人材は食品人間である。
    《商品経済は,食糧植物の品種の数を少なくする》には,《商品経済は,人材種の数を少なくする》が対応する。
    そして「教育」は,人材種の数を少なくしている人の営みの一つ──主要なもの一つ──である。

    「数学教育学」は,「教育」を井にする蛙になるので,《教育は,人材種の数を少なくする》が見えない。
    そこで,数学教育学は,栽培学を借りて井の外に出る。
    そして,《教育は,人材種の数を少なくする》を見る。


    教育は,「個の多様性」のことばに自分で自分を騙して,個をすごく多様なものに考える。
    しかし,この「多様」は,少数品種の中の多様である。
    個性は,調理がそのプロセスで現わすところのものである。
    「個の多様性」とは,少数品種を調理するその調理の多様性のことである。

    「数学教育学」は,この「個の多様性」を文字通りの意味にして,多様性をすごく大きなものとして捉える。
    数学教育学は,「個の多様性」を「少数品種の中の多様性」の意味にして,多様性をごく狭まったものとして捉える。