Up ユニバーサル 作成: 2015-12-23
更新: 2015-12-23


    数学は,「ユニバーサル (普遍的)」を立場にする。
    「ユニバーサル」とは?
    「ユニバーサル」の概念を,これと似て非なる「インターナショナル」「グローバル」の概念と対比してみよう。
    こうすると,「ユニバーサル」の意味がわかりやすい。


    「インターナショナル」は,「個の多様性」の概念のネーション版である。
    《相手の自分との違いは,リスペクトされるもの》が,これの思想である。


    「グローバル」は,1位の者のルールに他の者が従う形の「画一主義」である。
    ここで,1位の者は「勝者」であり,それ以外は「敗者」である。
    「グローバル」は,「勝者と敗者」のロジックである。
    そしてこれは,「インターナショナル」にあった「相手へのリスペクト」を捨てさせるロジックである。

    「相手へのリスペクト」を捨てることは,「自分へのリスペクト」を捨てることである。
    実際,グローバリズムの時代は,伝統が無用の長物として捨てられていく時代である。
    《一位の者のルールに他の者が従う》には,《自分へのリスペクトを捨てる》の心理的ダイナミクスが含蓄されている。


    「ユニバーサル」は,「個が,多様でありながら,共通にもつもの」である。
    「ユニバーサル」は,「個の多様性」に「通底」を加える思想である。
    数学は,この「ユニバーサル」を立場にする。

    数学は,言語としては最もシンプルなものである。
    数学の英語論文は,専門用語を除けば,中学英語である。
    つぎの類の言い回しで終始する:
      定義
        let ... be called/denoted ...
        let ... be ... such that ...
      含意
        if ... then ...
        ... implies ...
        (from ... ) it follows that ...
        therefore, it holds that ...
        then, ...
    実際,数学は,シンプルで紋切り型のことばづかいをよしとする。
    これが,論理運用の正誤のチェックがしやすい文体であるとともに,「ユニバーサル」の実現になるからである。

    数学の概念は,卑近が出自である。
    数学の専門用語をつくるときは,出自を大事にしてつくることになる。
    数学の卑近は,ユニバーサルである。
    そこで,専門用語の身分も「ユニバーサル」である。
    「インターナショナル」のネーションは,それぞれ自分の好みのことばで,専門用語の定義をつくっていけばよい。

    ちなみに,現前の「数学教育」は,「用語や記号はなんでもいい」の指導をしない。
    教育的には,用語は思いっきりさばけた日常的表現がよい。
    記号は,アルファベット1文字みたいのではなく,コンピュータプログラムがやっているように,何の記号であるのかがわかる表現がよい。
    実際,「数学教育」で「ことばの式」と言ってきたものは,これである。
    しかし,この言い方は,「式 (expression)」の意味を誤解させるばかりで,よくない。
    「式」は,「ことばの式」である。
    つぎの3つの式は,同格である:
      「x : time value by second
       y : distance value by cm
       a : velocity value by cm/second
         y=ax」
      「distance_value_by_cm
        = velocity_value_by_cm_per_second
          × time_value_by_second」
      「距離の値 (cm) = 速度の値 (cm/秒) × 時間の値 (秒)」