Up 「系」の存在論 : 要旨 作成: 2015-11-22
更新: 2016-01-14


    雲を見る。
    「形」がそこにある。
    「形」のメカニズムを探るため,雲の中に入っていく。
    雲をつくっている水の粒子の流れが見える。
    しかし,そこに「形」のよすがはない。

    雲の「形」は,水の粒子とその運動の系である。
    雲を見るとき,この系は個になる
    この個が,「形」として見える。

    雲の中に入るとき,個は系に戻る。
    「形」もすがたを消す。


    数学の問題を解いている者を見る。
    「問題解決力」がそこにある。
    「問題解決力」のメカニズムを探るため,その者のカラダの中に入っていく。
    カラダの諸組織・諸器官とこれらの運動が見える。
    しかし,そこに「問題解決力」のよすがはない。

    数学の問題を解いている者の「問題解決力」は,カラダの諸組織・諸器官とこれらの運動の系である。
    数学の問題を解いている者を見るとき,この系は個になる。
    この個が,「問題解決力」として見える。

    カラダの中に入るとき,個は系に戻る。
    「問題解決力」もすがたを消す。


    存在は,階層構造を現す:
      個は,ミクロの尺で,系になる
      系は,マクロの尺で,個になる


    ひとが存在にするものは「個」である。
    そこで,つぎのようになる:
      《個は,ミクロの尺で,系になる》: 存在の消失
      《系は,マクロの尺で,個になる》: 存在の現出
    こうして,存在は,「有って無い・無くて有る」になる。