Up 還元主義・表象主義 作成: 2016-01-13
更新: 2016-01-17


    現前の「数学教育学」の思想は,「数学的○○」の思想である。
    「数学的○○」は能力心理学の考え方であり,能力心理学はいまは「認知科学」に回収されている。

    認知科学は,還元主義である。
    そして,還元主義で「認知」の図式をつくったときに出てくるのが,「表象」である。
    認知科学は,表象主義である。

    還元主義・表象主義の「認知」の図式は,つぎのようになる:
    1. 「認知」は,外界の対象の認知である。
    2. 知覚が,対象を外的刺激として受け,知覚像をつくる。
    3. 内的枠組が,知覚像から,対象の写し (内的対象) として,対象の表象をつくる。


    表象主義の図式は,すっきりしていて,ひとをわかった気持にさせる。
    反表象主義だと,こうはいかない。

    表象主義がすっきりした図式を書けるのは,表象主義はことばの論理 (含意関係) の写しをやるものだからである。
    表象主義の「認知」の図式は,認知の観察から得たものではなく,「認知」のことばの含意をただ書いたものである。
    反表象主義だと,表象主義があっさり立ててしまう「外界の対象」のところで早くも,措定の仕方でジタバタすることになる。 (例:ソシュールの「差異しかない」)

    表象主義は,ことばの論理 (含意関係) の写しを「実在世界」する。
    したがって,「認知」の語の含蓄を展開することが,そのまま「認知」の説明になるわけである。
    こうして,表象主義は,ことばで考えることができ,ふつうにことばを使うようにことばを使える。
    対して,反表象主義は,ことばで考えることができない。ふつうにことばを使うようにはことばを使えない。
    これが,表象主義が根強く続いている理由である。