Up 数学教育学はなぜ (『2. 数学教育学の動機』) : 要旨 作成: 2015-12-02
更新: 2015-12-05


    科学は,理論を形にする。
    理論は,シンタクス,セマンティクスの枠組と,定理の積み重ねである。
    科学としての数学教育学は,生態学である。
    生態学は,理論の形をもてない。

    理論にならない生態学である数学教育学を「科学」とするのは,「理論」の規準 (criteria) を以てではなく,「現成論」の規準を以てである。
    科学は,現成論──現前を理の実現と定め,その理を探求する──である。

    数学教育学の「非理論」の面を強調して,「数学教育学は思想である」ということにする。
    「思想」のことばを用いるのは,数学教育学の動機が思想の動機であることを明確にするためである。
    数学教育学をすることは,思想をすることである。
    ただし,科学として思想をすることである。

    ひとはどんな位相において,思想の動機をもつか。
    「己の存在の証し」である。
    「数学教育学」を生業にしてきた者は,己の存在の証しとして自ずと数学教育学に向かう。
    数学教育学は,そのように存る。