Up 「数学のよさ」 作成: 2016-01-03
更新: 2016-02-05


    現前の「数学教育」は,「全ての者にとって数学は必要」を存在理由にしなければならない。
    そこで,「数学が必要」がつぎの二面になっている:
      1. 数学陶冶
      2. 一般陶冶
    また,「一般陶冶」に対しては,「数学が必要」のことばは使えない。
    そこで一歩退いて,「数学のよさ」が使われることになる。

    ここで,「数学のよさ」が実際にどのように述べられているかを,押さえておく。


    学校教育は,教科教育を束ねた格好で立つ。
    各教科教育は,ことばを以て,これを立てる理由が示される。
    そのことばは,『学習指導要領』にある:
    数学教育は,つぎにようになっている:
    • 小学算数 (目標)
      (1) 算数的活動を通して,
      (2) 数量や図形についての基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け,
      (3) 日常の事象について見通しをもち筋道を立てて考え,表現する能力を育てるとともに,
      (4) 算数的活動の楽しさや数理的な処理のよさに気付き,
      (5) 進んで生活や学習に活用しようとする態度を育てる。
    • 中学数学 (目標)
      (1) 数学的活動を通して,
      (2) 数学における基本的な概念や原理・法則の体系的な理解を深め,
      (3) 事象を数学的に考察し表現する能力を高め,
      (4) 創造性の基礎を培うとともに,数学のよさを認識し,
      (5) それらを積極的に活用して数学的論拠に基づいて判断する態度を育てる。
    • 高校数学 (目標)
      (1) 数学的活動を通して,
      (2) 数学における基本的な概念や原理・法則の体系的な理解を深め,
      (3) 事象を数学的に考察し表現する能力を高め,
      (4) 創造性の基礎を培うとともに,数学のよさを認識し,
      (5) それらを積極的に活用して数学的論拠に基づいて判断する態度を育てる。

    数学教育の理由になるものは,「数学のよさ」である。
    上記の「目標」は,「数学のよさ」を「目標」の形に言い替えたものである。
    よって,「目標」から逆にこの場合の「数学のよさ」を復元できる:
      (1) 数学は,卑近の形式化・体系化であるから,事象の探索/把捉/表現形式として,事象の探索/把捉/表現の道具になる。
      (2) 数学は,理論的体系である。
      (3) 数学は,卑近の形式化・体系化であるから,事象の探索/把捉/表現形式として,事象の探索/把捉/表現の道具になる。
      (4) 数学は,創造的探求であるので,これを学ぶことは創造・探求の精神・形を学ぶことになる。
      (5) 数学は,卑近の形式化・体系化であるから,事象の探索/把捉/表現形式として,事象の探索/把捉/表現の道具になる。

    さらに,内容を補足しつつこれを整理して,つぎが「目標」から復元されるところの「数学のよさ」になる:
    • 数学は,理論的体系である。
    • この理論体系は,卑近の形式化・体系化である。
    • 卑近の形式化・体系化であることは,数学のつぎの道具性を含蓄する:
        《事象の探索/把捉/表現形式として,
         事象の探索/把捉/表現に適用できる》
    • 数学の理論構築は,創造的探求である。
    • 数学の創造的探求は,それ自身を以て,創造・探求の精神・形を示す。