Up 「数学を勉強する」: 要旨 作成: 2016-02-05
更新: 2016-02-05


    「数学を勉強する」の現象は,多様である。
    ここでは,それらに「趣味」「仕事」「責務」「他律」の4極を見ることにする。

    「数学を勉強する」の普遍は,「探索/遊び」で考えることになる。「探索/遊び」は,ここでいう「趣味」である。
    数学教育学を生業う者にとって,「数学を勉強する」は「仕事」のうちである。
    「産業立国」のスローガン「国民は産業の基礎科学のさらに基礎学である数学を学ばねばならない」に応じる「数学を勉強する」は,「責務」である。
    「全員のための数学教育」での生徒の「数学を勉強する」は,「他律」が多数派になる。


    「趣味」「仕事」「責務」「他律」のうち,生態学的に特に関心が持たれるのは,「趣味」である。

    「仕事」「責務」「他律」は,役割行動である。
    役割行動は,商品経済といった系のダイナミクスの中に位置づけられる。
    この位置づけは,自明に見え,主題化してみたい気をおこさせるものではない。

    対して,「趣味」は,独自行動である。
    これは,系のダイナミクスの中に位置づけるというふうのものではない。

    ここで,「数学教育=形式陶冶」の立論が想起される。
    「数学教育=形式陶冶」を立てるときの「数学を勉強する」は,「系のダイナミクス」という文脈を外したものになる。
    よってそれは,ここでいう「趣味」にあたる。
    これが,「趣味」に対する関心の理由である。


    しかし,商品経済では,「趣味」も商品化する。
    独自と商品は,連続している。
    ここに,「数学を勉強する」に関するつぎの生態学的主題が立つ:
      《独自である「数学を勉強する」が商品経済に回収される現前とダイナミクス》
    この主題は,「疎外」である。