Up 「数学的○○」: 要旨 作成: 2015-10-11
更新: 2016-01-29


    「数学的○○」(「数学的考え方」「数学的問題解決」「数学的リテラシー」) は,箱物であり,できないことの企図である。
    数学教育学は,数学教育生態学として,この<できないことをやろうとする>を生態系の要素として捉える。
    生態学は,現成論である。
    数学教育生態学は,「数学的○○」を理が成っている形と定め,これの理を探求する。

    「数学的○○」が数学教育生態学の主題になる形として,ここでは「参加型授業」「グローバリズム」「表象主義」「経済効果」「系の律動」を挙げる。


    (1)「参加型授業」
    数学教育は,生徒を数学教育への適応者と不適応者に分ける。
    「不適応」は「不向き」を意味するだけであるが,現前の「数学教育」は不適応者を出さないよう努めるものになる。
    不適応者を出さないよう努める教育は,「縛る・強いる」になる。
    そして,「縛る・強いる」は,不適応者において悪循環する。

    「数学教育」「数学教育学」は,この力学系における自身の均衡相を実現するように,運動・変質する。
    それは,「不適応」「悪循環」がありようのない数学教育へのシフトである。
    その数学教育は,授業を参加型にするものである。

    参加型授業は,評価がありようのない授業でなければならない。
    数学を教える授業は,評価がいやでも立ってしまう授業である。
    そこで,《数学を「数学的」にシフト》の考えになる。
    「数学的○○」は,数学教育の「参加型授業」の方向性と符合する。


    (2)「グローバリズム」
    商品経済の人づくりは,グローバリズムを思想にするようになる。
    この思想は,人材を「問題解決型ジェネラリスト」で表現する。
    「数学教育」は,これに反応・対応する。
    「問題解決型ジェネラリスト」を「数学的○○」で表現する。
    「数学的○○」は,問題解決型一般能力として発想されるものである。


    (3)「表象主義」
    「数学的○○」は,「数学教育」「数学教育学」の「能力」「能力陶冶」観がつくるものである。
    現前の「数学教育」「数学教育学」は,認知科学をベースにしている。
    認知科学をベースにすることは,表象主義につくことである。

    表象主義は,行為語「‥‥」に対し「‥‥する力」を実体的に立てる。
    実体になった「‥‥する力」に対しては,自ずとこれの直接陶冶が発想される:
      「‥‥する」を行うことが,「‥‥する力」をつけること

    「数学的○○」は,この思考法である。
    「数学教育」「数学教育学」は,「能力陶冶」を「数学的○○の陶冶」に定め,「数学的○○の指導」を立てる。
    「数学教育」「数学教育学」の「能力」「能力陶冶」観は,表象主義の「能力」「能力陶冶」観であり,能力心理学に溯るものである。


    (4)「経済効果」
    「数学的○○」は,箱物であり,できないことの企図である。
    <できないことをやろうとする>は,生態系を攪乱する。
    攪乱は,活性化である。
    商品経済では,経済効果である。


    (5)「系の律動」
    「数学的○○」は,箱物であり,できないことの企図であり,「数学教育」の系を攪乱するものになる。
    系を攪乱する運動は,《量の大きさと抑える力が比例》になるので,反動の分を含めると周期運動になる。
    これは,「数学的○○」が数学教育の心臓の拍動をつくっているということ,即ち「数学的○○」は数学教育の心臓だということである。
    実際,「数学的○○」は,約20年周期の拍動をつくる。