Up 生きる糧/術 作成: 2015-10-27
更新: 2015-10-27


    生物の<生きる>は,<遺伝を遂げる>である。
    遺伝行為は,先ず生殖である。
    そして子育てをする生物の場合,遺伝行為に文化伝達が加わる。
    ──同じ生物種でも,棲む場所によって文化が違ってくる。

    「数学を」には,文化伝達行為としての「数学を伝える」もある。
    「数学を与える」は,「数学を伝える」とどう関係するか?

    「数学を与える」は「生きる糧を相手に与える」である。
    ところで,生きる糧を相手に与えることは,生きる術(すべ)を一つ伝えていることになる。
    生きる糧を与えることは,《これは生きる糧になる》を暗黙に伝えることであり,《これを生きる糧にする》は生きる術(すべ)だからである。
    そして,生きる術(すべ) は,文化である。
    こうして,「生きる糧を相手に与える」は,文化伝達の一つということになる。

    結局,つぎのようになる:
      《「数学を与える」は,「数学を伝える」に含まれる》

    では,「数学を伝える」は「数学を与える」にはならないか?
    即ち,文化伝達は,「生きる糧を相手に与える」にはならないか?
    実際,行うことは同じである。──「淡々と数学を教える」である。
    違うのは,「淡々と数学を教える」の機能的意味づけである。

    文化伝達を「生きる糧を相手に与える」にするためには,「生きる糧」の意味を大きく拡張しなければならない。
    例えば,絶やすのは惜しい伝統技術を残すために,継承者を定め,伝える。
    これを,「生きる糧を相手に与える」にするときは,「糧」の効果,「糧」の意味を,かなり迂遠に考えることになる。
    しかし,翻って「数学を与える=生きる糧を相手に与える」を見れば,この「糧」の効果,「糧」の意味も,かなり迂遠に考えることになるものである。

    本テクストは,「数学を与える = 数学を伝える」(イコール) に着地すると予想する。