Up 「向上・進歩・改革」 作成: 2015-12-25
更新: 2015-12-25


    「数学教育」「数学教育学」を生業にすることは,数学教育の「向上・進歩・改革」を考え事業する者になることである。

    「向上・進歩・改革」の事業は,はた迷惑で終わる。
    はた迷惑で終わるのは,もともと無理な事業だからある。
    「無理」の意味は,「無理構造」である。

      『荘子』に「渾沌」の話がある (應帝王 第七) :
        南海之帝為儵,北海之帝為忽,中央之帝為渾沌。
        儵與忽時相與遇於渾沌之地,渾沌待之甚善。
        儵與忽謀報渾沌之德,曰 :「人皆有七竅以視聽食息,此獨無有,嘗試鑿之。」
        日鑿一竅,七日而渾沌死。
      儵と忽が,目耳口鼻の無い渾沌によかれと思い,目耳口鼻をつけようとしてその穴 (七竅) を鑿ったら,渾沌は死んでしまった。(「儵忽」は「軽率」の意味)

    数学教育の系は,ライフサイクル/一生/死をもつ。
    「数学教育」「数学教育学」は,数学教育を「向上・進歩・改革」の右肩上がりで考える。
    「向上・進歩・改革」を当然のことにする。
    「数学教育」「数学教育学」は,「ライフサイクル/一生/死」の考えをもたない。


    ひとは,「いずれ死ぬ」「死んでしまった」の言を憚る文化をつくっている。
    人社会の将来は,「ヒト種滅亡の理」の話ではなく「持続可能性」の話にするのが,マナーである。
    人の死は,「死んでしまった」を言うのではなく「いまは天国で‥‥」を言うのが,マナーである。

    「死」の言を憚ることは,「死」の考えをもたなくなることである。
    「死」の考えをもたない者は,現前に対するスタンスを「向上・進歩・改革」にする者である。
    「向上・進歩・改革」を是にして,その逆を非にする。