「数学教育」の進化 作成: 2016-03-07
更新: 2016-03-07


    盛者(じょうしゃ) は必衰である。
    衰は,「自壊/自滅」がこれの形である。
    そして,自壊/自滅は,「本質疎外の螺旋運動」がこれのダイナミクスである。

      註 : ここでは「螺旋」のことばを,「正のフィードバック」「runaway effect」の意味で用いる。

    自壊/自滅 (本質疎外の螺旋運動) は, 「図体拡張」がこれの契機である:
      カラダが拡張すると,カラダのまかないが専らになり,肝心要が手抜きされる── 本質疎外
      そしてこれが,本体の機能不全の 螺旋運動 の開始になる。

      註 : この理(ことわり) を,「盛者必衰の理」と謂う。


    現前の「数学教育」(学校数学) は,「本質疎外の螺旋運動」の契機になる「図体拡張」を孕んでいる:
      1. 数学必修
      2. 歩留まり100パーセント
    どちらも無理な要求であるが,「数学教育」というものは,これを「正義」として絶対的に引き受けることを自分の条件にしてしまう。

    この「図体拡張」により,「数学教育」は「本質疎外の螺旋運動」に入って行く。
    「本質疎外」は,「数学教育」の「数学離れ」である。
     ──強調:「数学教育」が,「数学離れ」になるのである。

    数学教育は,数学 (の精神) がこれの重しである。
    数学離れは数学離れに正のフィードバックを返す。
    授業,教員,教員養成等々で,相互促進的に数学の低落が進行する。
    数学離れの螺旋運動というわけである。


    「負のフィードバック」を,「弾性」と呼ぶ。
    「数学教育」は,数学が<弾性>である。
    「数学離れ」は,<弾性>である数学を手抜きしている様である。

    翻って,「数学教育」を保ちたいなら,数学の手抜きはできない。
    数学の手抜きをしないためには,「数学教育」は「数学必修,歩留まり100パーセント」を捨てねばならない。

    実際には,「数学教育」は「数学必修,歩留まり100パーセント」に即いて,「数学離れ」に甘んじ,「自壊・自滅」に甘んじる。
    生態系の理は「数学教育」のこの運動の方にあるというわけである。




    備考. 振動と螺旋運動
    <運動する個>の系は,「振動」(周期運動) が「動的平衡」のたやすい形になる。
    実際,「振動」はさまざまな系に見出される。
    振動のメカニズムは,変位と力の「負のフィードバック」である。
    変位が大きくなると,これを小さくしようとする力が大きくなる。
    この結果が「振動」である。

    力は加速度に還元されるので,変位と力の「負のフィードバック」は,つぎの微分方程式に表現される:
        d2x/dt2 = ーω2
    そしてこれを解けば,確かに周期関数になる。

    これに対し,変位と力の「正のフィードバック」は,つぎの微分方程式に表現される:
        d2x/dt2 = ω2
    そしてこれを解けば,指数関数になる。──実際,指数関数が「螺旋運動」の表現である。