Up 偶然──「ロックイン」ダイナミクス 作成: 2017-08-16
更新: 2017-08-16


    系の進化は,偶然の累積である。
    複雑系科学に出てくる「創発 emergence」が,そこでは起こっている。

    複雑系の考えを応用した経済学に,「ロック・イン lock-in」の概念がある:
      いろいろな偶然が重なって,ある仕様/規格Aが多数派になる。
      ユーザーは勝ち馬に乗ろうとする者であるので,Aへと雪崩を打つ。
      Aは,デファクトスタンダードとして,ユーザをロック・インする。
      A独りが残り,対抗していた仕様/規格は消滅する。
      (「2番ではダメ」)

    「ロック・イン」の要点は,「勝ち残ることと優れていることは別問題」である。
    系の進化は,ヘーゲルが考えたような「絶対理念の実現」ではない。


    学校数学での「ロック・イン」現象では,「数は量の抽象」が代表的である。

    「反体制=正義」のイデオロギーに世の中が染まっていった時代,「反体制=正義」の陣営から「数は量の抽象」を唱える者が現れた。
    遠山啓である。
    文部省の「数は量の比」を批判し,和田義信と「割合論争」を展開する。
    周りは,遠山を勝ち馬とみて,「数は量の抽象」に雪崩を打つ。
    こうして,「数は量の抽象」が学校数学になる。
    「数は量の抽象」は,正しいから勝ったのではない。
    実際,数学は「数は量の比」である。