Up 時流──自由主義と管理主義の間の揺れ 作成: 2017-07-26
更新: 2017-07-26


    学校数学は,これのアウトラインを定めているものがある。
    『学習指導要領』である。

    このアウトラインは,細かくなる傾向にある。
    これは,学校数学が実現されていく各種プロセスにおいて当事者の<裁量>の余地を少なくしていく流れである。
    これは,時流である。


    一般に,時代の思潮は,自由主義と管理主義の間で揺れる。
    いまは,「コンプライアンス」の標語があらゆる分野に行き渡っているように,管理主義の時代である。
    この時代には,ひとは<裁量>を負いたくない。
    <裁量>で失敗したら,罰せられるからである。

      管理主義は,失敗は罰せられる。
      翻って,失敗が罰せられないのが,自由主義。

    社会では,ひとは<指示する者>と<指示される者>の二役を務める。
    仕事では,誰もが「中間管理職」である。
    管理主義の時代──失敗したら罰せられる時代──は,ひとは<指示する者>と<指示される者>の両面で,<責任を他の者に投げる>という形の自己防衛に努める。
    <指示する者>としては,下に対し丸投げをする。
    <指示される者>としては,上に対し指示待ちを決め込む。
    丸投げ・指示待ちは,個人の資質の問題ではなく,時代の問題である。


    学校数学を考えるときの最も重要な視点が,この「自由主義と管理主義の間の揺れ」である。
    学校数学は,かつては『学習指導要領』の「算数・数学」のアウトラインの緩さを誇っていたが,いまは厳格を誇る(てい)である。
    そして,<裁量>の余地を少なくすることを最も強く要求してくるのは,実は教育現場である。 ──教育現場の萎縮!