Up ススズメバチ亜科の種の幼虫 作成: 2019-04-07
更新: 2019-04-07


  • 成虫と幼虫の「栄養交換」

  • 排泄
      松浦誠 (1988), pp.216,217
    スズメバチの幼虫はふ化してから摂食しているあいだはいっさい排せつ行為をしない。
    幼虫は十分に成熟すると、カイコのように白い繭をつくるが、それが完成するとはじめて腸内に溜まったそれまでの不消化物を一気に体外に押し出してしまう。
    これは発生学的に見ると、消化管のできあがってきた過程と関連している。
    昆虫の消化管は前腸、中腸、後腸で構成されている。
    発生学的に前腸と後腸とは、それぞれ体の前と後ろの部分が陥没してできあがった外胚葉性である。
    ところが、中腸だけはそれとは別個に内側で内胚葉性の袋としてできあがり、あとで前腸、後腸とそれぞれつながって貫通するようになっている。
    そのときが、スズメバチの幼虫では、蛹になる直前というわけである。
    それまで腸内に溜まっていた不消化物は、後腸へ通じる弁が開くとともに一気に体外へ押し出される。
    その便の量は幼虫の体重の三分の一にも達する。
    このやや固めの大糞塊は、幼虫自身によって育児室の底に押し固められる。
    これは、やがて乾燥するとセメントのように固まり、巣盤全体の堅牢化に役立つ。  ‥‥‥
    ミツバチでは、育児室の底に残された幼虫の糞塊は羽化後にとりのぞかれて、巣の外に捨てられる。
    またホソアシナガバチやチビアシナガバチの仲間は、幼虫の脱糞が終わると、成虫はすぐに育児室の底に穴を開け、そこから糞塊をひっぱり出して外へ捨て、その後をまたふたをしておく習性がある。


  • 引用文献
    • 松浦誠 (1988) :『スズメバチはなぜ刺すか』, 北海道大学図書刊行会, 1988.