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松浦誠・大滝倫子・佐々木真爾 (2005), pp.22-25
形態:
小型のアシナガバチで体長11〜17mm、体色は黒色で斑紋は赤褐色、前伸腹節上の2縦線、腹部第1、3、4節の後縁などは黄色。
北海道や本州中部の個体は本州の平地や南部に比べ小型で、黄斑がやや発達し、前胸背板は前後縁を除いて黒色 (本州産は赤褐色) となる。
キボシアシナガバチに似ているが、本種は腹部の第1、3、4節の黄紋が鮮明なので区別できる。
分布:
北海道 (石狩以南)、本州、四国、九州で、北海道、本州の中部以北では平地にも多いが、他では低山地に普通。
発生経過:
女王の巣づくりは、北海道、東北、中部山地などの寒冷地では5月下旬、本州南部以南の暖地では4月下旬より行われる。
働きバチは6〜7月、オスと新女王は7〜9月に羽化する。
交尾は、新女王の羽化後十数日前後に、巣上または巣外で行われる。
新女王はその後も巣に留まり、9〜10月に地上の植物の枯茎内などに移動し、主に単独で越冬する。
造巣習性:
営巣場所は、北海道や中部山地では日当たりの良い岩場に多いが、木の枝、人家の軒、板壁等にも見られる。
暖地では低木の細枝を好むが、関東や中部地方では人家の軒等にも普通。
巣は灰褐色で、巣柄は黒褐色の光沢ある上塗りがなされる。
巣の形状は本種に特有で、育房は巣柄を基点に反対方向に増築され、しだいに先端部は上方に反るので、細長い舟型となり、他種の巣とは区別がつく。
卵は巣の先端の浅い育房にのみ産み付けられる。いったん成虫の羽化した育房を、再び育子に利用することがない。
育房の大きさは、羽化後で直径6〜 8 mm、深さ21〜30mmで、繭のふたは白または灰白色。
営巣規模:
女王のつくる育房数は、北海道では30〜80房で平均で50房を越えるが、本州南部では30〜40房と少ない。
一方、働きバチの羽化後の最終育房数は、北海道では40〜120房にとどまるが、本州以南では200〜500房に達し、東北や中部地方でも300〜400房は稀でない。
巣の最発達時の働きバチは、北海道では数頭〜十数頭と20頭を越えることは稀だが、本州南部では20〜50頭となる。
オスと新女王の総羽化数は、北海道ではそれぞれ10〜40頭、本州南部で20〜200頭である。
食性:
獲物はチョウやガの幼虫が主メニューとみなされ、ガガンボ類を狩った例もある。
炭水化物源として、アブラムシ、カイガラムシ、キジラミ等の甘露、イタドリ、ノブドウ等の花蜜を集める。
攻撃性:
威嚇性、攻撃性ともやや強く、巣に近寄ると相手に向かつて一斉に体を振動して威嚇する。
巣に急に近寄ったり、巣のついた枝などを振動すると、一斉に飛び散って刺しに来る。
下草刈りや草刈りで刺されるこどが多い。
北海道では、最近小樽市などの市街地で発生が多くなり、人家の板壁などに営巣するため刺症事故が増加しており、アナフィラキシーショックも知られている。
また、4月上旬に、干した洗濯物に越冬後の女王が潜入し、3才の女児が太腿を刺された例がある。
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- 引用/参考文献
- 松浦誠・大滝倫子・佐々木真爾 (2005) :『蜂刺されの予防と治療──刺す蜂の種類・生態・駆除、蜂刺され対策と医療』, 林業・木材製造業労働災害防止協会, 2005.
- 参考Webサイト
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