Up | 国定忠次 | 作成: 2018-10-24 更新: 2018-10-24 |
今度珍し侠客口説き 国を詳しく尋ねて聞けば 国は上州吾妻郡 音に聞こえし国定村よ そのや村にて一二と言われ 地面屋敷も相応なもので 親は忠兵衛という百姓で 二番息子に忠次というて 力自慢で武術が好きで 人に勝れし剣術なれば 親は見限り是非ないことと 近所親類相談いたし 地頭役所へお願いなさる 殿の御威光で無宿となりて 近所近辺さまよい歩き ついに博徒の親分株よ 子分子方もその数知れず 一の子分は日光無宿 両刀遣いの円蔵というて 二番子分は甲州無宿 甲斐の丘とて日の出の男 それに続いて朝おき源五 またも名高き坂東安二 これが忠次の子分の中で 四天王とて呼ばれし男 頃は弘化の丙の午の 秋の頃より大小屋かけて 夜の昼のも分かちはなくて 博打渡世で月日を送る 余り悪事が増長ゆえに 今はお上のお耳に入りて 数多お手先その数知れじ 上意上意とその声高く 今は忠次も身も置き所 是非に及ばず覚悟を決めて 子分子方も同意の覚悟 鉄砲かついで長脇差で 種子島へと火縄をつけて 三ツ木山にて捕手に向かい 命限りの働きなどと 忠次付き添う女房のお町 後に続いて妾のお鶴 どれも劣らぬ力量なものよ 髪は下髪長刀持って 今を限りと戦うなれど 子分四五人召し取られては 今は忠次も早たまらじと 危うけれども覚悟を極め 越後信濃の山越えしよと いずくともなく逃げよとすれど 後に付き添う二人の女 命限りに逃げ行くほどに 今度忠次の逃げ行く先は 国はいずこと尋ねて聞けば これも東国上州なれど 赤城山とて高山ござる 駒も通わぬ鶯谷の 野田の森にと篭りて住めば またも役人不思議なことに 手先手先をお集めなされ 頭忠次を召し捕らえんと 最寄最寄へ番小屋かける 今は国定途方に暮れて 女房お町と妾に向かい たとえお上へ召し捕らわれて 重い刑罰厭いはせぬが 残るこなたが不愍なままに さらばこれより国越えせんと 残る子分の二人を連れて 音に聞こえし大戸の関所 忍び忍びて信濃の国へ 忍び隠れて八年余り 鬼も欺く国定なれど 運のつきかや病気が出でて 今は是非なく故郷へ戻る 隣村にて五名井の村の 後家のお徳に看病頼む この家お徳の以前というは 日光道中玉村宿で 数多お客の勤めをすれど 忠次さんには恩あるゆえに たとえこの身は何なるとても 何ぞ病気を本復させて 元の体にひだててやろと 神や仏に願望かけて 雨の降る日も風吹く夜も 裸足参詣を致されまして 茶断ち塩断ち水垢離とって 一所懸命祈ったけれど 天の罰かやお上に知れて 御取り締まりのお手先衆は 上意上意の声かけられて 女房妾や忠次にお徳 それに続いて子分に名主 以上七人召し捕らわれて ついにこれらは軍鶏篭よ 支度できたで厳しく守り 花のお江戸へ差し立てられる 音に聞こえし国定忠次 江戸の役所でご詮議受けて 余り吟味が厳しいゆえに 殊に病気の最中なれば 是非に及ばず一つの悪事 これを白状致したゆえに 関所破りのその咎めやら 木曽の道中臼井のうちで 大戸ばんしの狼谷で 重いお仕置きかけられました これを見る人聞く人さんよ 男女子供の戒めよ ■国定忠治2 (八木節) 御来場なる 皆さん方え 平に御免を 蒙りまして 何か一席 読み上げまする 掛かる外題を 何よと聞けば 猫か鼠か 泣く子も黙る 鬼も恐れる 国定忠治 然らば此れから 読み上げまするがアーイサネー 此処に忠治の 此の一代記 国は上州 佐波郡にて 音に聞こえた 国定村の 此の家忠治の 生い立ちこそは 親の代まで 名主を勤め 人に知られた 大身なれば 大事息子は 即ち忠治 蝶よ花よと 育てるうちに 幼けれども 剣術柔 今はようよう 十五の歳に 人に勝れて 目録以上 明けて十六 春頃よりも ちょいと縛えき 張り始めから 今日も明日も 明日も今日も 日々毎日 縛えき渡世 遂に悪事と 無職が渡世 二十歳ばかりの 売り出し男 背は六尺 肉付きゃ太い 男伊達にて 真の美男 一の子分の 三ツ木の文蔵 それに続いて 数多の子分 子分小方を 持ったと言えど 人に情の 慈悲善根の 感じ入ったる 若親方に 今は日の出に 魔が差したるか 二十五歳の 厄歳なれば 総て万事に 大事を取れど 丁度其の頃 無職の頭 お聞き下さる 皆さん方え 後段続けて 読み度いけれど 先ずは此の度で 止め置きまして 又の御縁で 伺いまするがアーイサネー ■国定忠治3 (八木節) ハァーまたも出ました三角野郎が 四角四面の櫓の上で 音頭取るとはお恐れながら 国の訛りや言葉の違い お許しなさればオオイサネー さてもお聞きの皆様方へ チョイト一言読み上げまする お国自慢は数々あれど 義理と人情に命をかけて 今が世までもその名を残す 男忠治のその生い立ちを 不弁ながらも読み上げまするが オオイサネー 国は上州佐位郡にて 音に聞こえた国定村の 博徒忠治の生い立ちこそは 親の代には名主をつとめ 人に知られた大身なるが 大事息子が即ち忠冶 蝶よ花よと育てるうちに 幼なけれども剣術柔 今はようやく十五の年で 人に優れて目録以上 明けて十六春頃よりも ちよっと博奕を張り始めから 今日も明日も明日も今日も 日にち毎日博奕渡世 負ける事なく勝負に強く 勝って兜の大じめありと 二十才あまりの売り出し男 背は六尺肉付き太く 器量骨柄万人優れ 男伊達にて真実の美男 一の子分が三つ木の文蔵 鬼の喜助によめどの権太 それに続いて板割浅太 これが忠治の子分の中で 四天王とは彼らのことよ 後に続いた数多の子分 子分小方を持ったと言えど 人に情は慈悲善根の 感じ入ったる若親方は 今は日の出に魔がさしたるか 二十五才の厄年なれば すべて万事に大事をとれど 丁度その頃無宿の頭 音に聞こえた島村勇 彼と争うその始まりは かすり場につき三度も四度も 恥をかいたが遺恨のもとで そこで忠治は小首をかしげ さらばこれから喧嘩の用意 いずれ頼むとつわ者ばかり 頃は午年七月二日 鎖かたびら着込を着し さらばこれから喧嘩の用意 いずれ頼むとつわ者揃い 頃は午年七月二日 鎖かたびら着込を着し 手勢揃えて境の町で 様子窺う忍びの人数 それと知らずに勇親方は それと知らずに勇親方は 五人連れにて馴染みの茶屋で 酒を注がせる銚子の口が もげて盃みじんに砕け けちな事よと顔色変えて 虫が知らせかこの世の不思議 酒手払ってお茶昼を出れば 酒手払ってお茶屋を出れぱ いつに変ったこの胸騒ぎ さても今宵は安心ならぬ 左右前後に守護する子分 道に目配ばせよく気を付けて 目釘しめして小山へかかる 気性はげしき大親方は 気性はげしき大親方は およそ身の丈け六尺二寸 音に聞こえし怪力無双 運のつきかや今宵のかぎり あわれ命はもくずのこやし しかもその夜は雨しんしんと 闇を幸い国定組は 今は忠治は大音声で 名乗り掛ければ勇親方は 聞いてニッコリ健気な奴ら 命知らずの蛆虫めらと 互い互いに段平物を 抜いて目覚す剣の光り 右で打ち込む左で受ける 秋の木の葉の飛び散る如く 上よ下よと戦う内に 運のつきかや勇親方は 胸をつかれて急所の痛手 ひるむ所へつけ込む忠治 首をかっ切り勝鬨あげて しめたしめたの声諸共だが オオイサネー |