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Kaku (2021), p.163
宇宙が生まれた時点では、ただひとつ「超力」だけがあり、その対称性は宇宙のあらゆる粒子を包含するものだったと考えられている。
だが超力は不安定で、対称性が破れだした。
最初に分かれたのは重力だった。
続いて強い核力と弱い核力が分かれ、最後に電磁力が残された。
そのため、今日の宇宙は分解されていて、どの力もまったく異なっているように見える。
物理学者の仕事は、こうしたかけらを再び集めてひとつの力に戻すことなのである。
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同上, pp.190,191
私としては、多くの科学者の悲観的な見方は的外れなのではないかと思っている。
ひも理論の証拠が見つかるとすれば、どこかの巨大な粒子加速器のなかではなく、だれかが理論の最終的な数式を見つけたときのようにも思えるからだ。
ここで言いたいのは、ひも理論を実験で証明する必要はまったくないのかもしれないということである。
万物の理論は通常の物質にかんする理論でもある。
第一原理からクォークなどすでに知られている素粒子の質量を導き出せたら、それが最終理論であることの確かな証拠になりうる。
実験面についてはまったく問題にならない。
標準模型には、手作業で代入する自由パラメータ (クォークの質量や相互作用の強さなど) が 20個ほどある。
素粒子の質量や結合にかんする実験データはたくさんある。
ひも理論によってこうした基本定数を、何の仮定もなしに第一原理から正確に算出できれば、それは理論の正しさを証明していると私は思う。
宇宙の既知のパラメータをただひとつの方程式から生み出せたら、それはまさに歴史的な快挙だろう。
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- 引用・参考文献
- Kaku, Michio (2021)
The God Equation : The Quest for a Theory of Everything Hardcover
- Doubleday, 2021.
- 斉藤 隆央 [訳]『神の方程式──「万物の理論」を求めて』, NHK出版, 2022
- Hossenfelder, Sabine (2018)
Lost in Math : How Beauty Leads Physics Astray
- Basic Books, 2018.
- 吉田 三知世 [訳]『数学に魅せられて、科学を見失う──物理学と「美しさ」の罠』, みすず書房, 2021.
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