Up 「シンギュラリティ」 作成: 2018-04-28
更新: 2018-04-28


    螺旋上昇は,どこかで頭打ちになる。
    或いは,崩落する。
    螺旋曲線の表現素材が,自身の上昇を拒むからである。

    世界人口は,時に比例関数的,時に指数関数的に増加してきている。
    一方,世界人口の増加は,早晩頭打ちになり,そして崩落する。
    増加曲線の表現素材が,自身の増加を拒むからである。

    ムーアの法則──「集積回路上のトランジスタ数は 1.5 年ごとに倍になる」──は,人類や宇宙の発達速度の法則ではない。
    数式は,適用対象を誤ることでナンセンスになる。
    「シンギュラリティ」のナンセンスは,このタイプのナンセンスである。


    「シンギュラリティ」は,サイバーパンクである。
    ──人の脳と AI の同化を物語るサイバーパンクである。

    サイバーパンカーは,なぜ AI を人の脳に(なぞら)えるのか。
    脳を,考えるためのものと思っているからである。
    そして,「信号伝達系だから,結局真似ることができる」と思っているのである。

    実際は,人の脳は AI と同化するものではない。
    昆虫の脳と同化しないのと,同じことである。
    なぜ昆虫の脳と同化しないか。
    カラダが違うからである。

    脳は,カラダを機能的に動かすためのものである。
    脳は,カラダから切り離せない。
    切り離したら,無意味になる。

    脳は,このようなものとして,AI が真似られないものである。
    脳に AI を接ぐという考えも立たない。
    実際,脳には AI を接げるような部位は存在しない。



  • 参考Webサイト
  • 参考文献
    • Ray Kurzweil. The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology. Viking, 2005..
      • 井上健[訳]『ポスト・ヒューマン誕生──コンピューターが人類の知性を超えるとき』, NHK出版, 2007.
      • 井上健[監訳]『シンギュラリティは近い──人類が生命を超越するとき [エッセンス版]』, NHK出版, 2016.