Up 「世間体」の終焉 作成: 2023-03-11
更新: 2023-03-11


    結婚しているかどうかの問いは,いまはセクハラになる。
    結婚しているかどうかの問いに,「いい大人が結婚していないのはおかしい」の含蓄を読むからである。
    実際,一昔前まで,未婚者は「いい大人が結婚していないのはおかしい」の圧力を受けるものであった。


    その圧力をかけるのは,家である。
    圧力のことばは,「いい大人になっている子どもが結婚しないでいるのは世間体が悪い」である。

    家は,共同体の構成分子である。
    共同体の構成分子である家は,世間体でつながっている。
    共同体は,世間体がなくなると,崩壊する。
    家に身をおくことは,「世間体が悪い」を言われない身の処し方をするということである。


    若者は「世間体が悪い」を言われる。
    これにがまんがならず,そして家を出ることができる者は,家を出ることになる。

    昔は,個人が勝手に家を出るということはできなかった。
    家族のだれかが家の人質に,あるいは家族が共同体の人質に,とられている(てい)だったからである。
    いまは,家・共同体の衰退が進行していて,個人は家を出ることができる。

    若者は家を出て都市に住む。
    地元にはもう帰らない。
    こうして「世間体」は,適用する対象を失う。
    「世間体」の終焉である。