Up 「家を継ぐ」の終焉 作成: 2023-03-23
更新: 2023-03-23


    いまはもう見ないが,昔のテレビドラマには「姑の嫁いびり」物がよくあった。
    いまはもう見ないのは,結婚は夫の親の家に嫁ぐことではなくなったからである。

    同性婚がふつうになってきたように,今日の「結婚」の意味は,「セクシュアルな同居を世間に認知させる」である。
    これに対し昔の「結婚」の意味は,「男の家に嫁ぐ」だったのである。

    「男の家に嫁ぐ」の内容は,「男の家を継ぐ子を産み・育てる」である。
    その子は,男である──家を継ぐのは男である。
    「女」の第一義は,「男の家の後継ぎになる男を産み・育てる」であった。
    特に,「家」とは3世代が同居するものだったのである。


    女は,家を継ぐ男を産まねばならない。
    そしてその男児は,成人して家の後継ぎをもうけるまで,生きられねばならない。
    この2つが成る確率は,そんなに高くはない。
    昔は,人は簡単に死んだのである。

    というわけで,女は子どもをたくさん産むことが務めであった。
    動物全般のメスと同じだったのである。
    子どもを産めない女は,離縁してよいものであった。
    子どもを産んでも男を産めないでいる女は,家の中で肩身を狭くすることになる。

    男児をもてない家には,「養子」という手段がある。
    保険として養子を取っておくというのも,ふつうにあったことである。


    家は,長男が継ぐ。
    資産は,分けると無くなるからである。
    長男が継ぐのは,「長男が継ぐ」と決めないと家督争いが起こるからである。

    長男以外は,外に出される。
    そして都市が,彼らの受け皿になる。

      ただし農家の場合,新田開発で長男以外が田畑をもつという手がある。
      実際,新田開発が推奨され,農地が広がっていくことになる。


    家を継ぐことが厳格にされたのは,武士と農民である。
    家督相続の制度を以て,厳格にされた。

    逆に,自分の境遇がこの制度とは関係のない者にとっては,家はどうでもよいものになる。
    都市生活者は,資産家を除けば,このような者になる。

    ただし,「家を継ぐ」は,これが関係のない者も真似することになる。
    「家を継ぐ」をステータスに見なしたためである。


    「家」とは,「家を継ぐ」の「家」である。
    ──同居とか建物のことではない。

    この「家」は,上に見たように,多産を導くシステムになっている。
    翻って,「家」が終焉することは,「少子化」に進むことである。
    そしてこれが,いま起こっているわけである。


    ひとは「少子化の危機」を聞かされ,すっかりその考えになっている。
    しかし,現代人にとって,「家」は御免となるものである。

    こうして,「少子化」はなるしかないものである。
    人の系は進化する。
    そして「少子化」は,進化の現ステージの内容の1つというわけである。
    達観すべし。