Up 「移民の国へ」関連法の用意周到 作成: 2023-04-30
更新: 2023-04-30


読売新聞, 2023-04-20


読売新聞, 2023-04-25
4面
  2面


    日本は法治国である。
    法治国は,政治として行うことはすべて法に拠っていなければならない。
    根拠とする法がなければ,新規につくることになる。
    それをつくるのは,立法府の国会である。

    行政と立法が別々の機関になっている。
    これを「なんかめんどうくさいな」と思ってはならいんだよというのを,学校で「三権分立」のことばで習う。
    政治は,スムーズにことが運ぶようにしてはならないのである。
    スムーズに運ぶことを許すと,思い込みによる軽率・粗忽をやってしまうからである。
    「三権分立」は,「人間は頭が悪い」に立脚している。

    行政は,事務方が核である。
    立法は,政治の素人である大衆の代表がこれに就く。
    よって,国会は事務方から上がってくる法案を通すだけのところになる。
    国会の審議は,通過儀礼というわけである。

    これは,是非も無しである。
    大衆もこれを感じているので,国政選挙には「低投票率」で応えている。
    投票するにしても,候補者はどうでもよく,政党選びと定めている。
    そして支持政党も,「支持政党無し」が第一党である。


    事務方による法案づくりは,「有識者会議」を通過儀礼として用いる。
    有識者会議が提案したという格好にするのである。
    有識者会議の肝心は,議長の人選である。
    議長は事務方と示し合わせて法案を通す役割であり,この人選を間違わなければよい。
    「そんなに姑息にならなくても」と思ってしまうが,これがいちばんよい方法だということになったわけである。

    いまは聞かなくなったが,昔は事務方の勢力を指すことばに「霞ヶ関」というのがあった。
    そしていまはどうかわからぬが,昔はとびっきり頭のよい者が「霞ヶ関」に入ることになっていた。
    彼らにしてみれば,政治家は,「先生」と呼んでいい気持ちにさせておけばよいだけのものである。
    「先生」とはこのように使われることばなので,「先生」と呼ばれている者は勘違いせぬよう。


    法律は,<先に備えてつくっておく>が要諦である。
    急に必要になってつくるというのは,うまくいかない。
    この点「特定技能制度」──「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」(平成30年法律第102号) ──は,「うまいなあ」と思わせるお手本である。
    始めは核心部分を薄ボンヤリ入れといて,それからグラデーションで堀を埋めていくのである。
    そしてこの度の「修正案」で,移民障壁は無くなった。


    日本は,移民が働き手の中心になる国になっていく。
    国会議員は,育児支援が「少子化対策」だと思って,これを議論している。
    「移民」は,いまはまだ刺激的なテーマなので,国会議員にはこの程度でいてもらうというのが,ちょうどよいというわけである。