Up リストラ・リスクは<子をもたない>を択ばせる 作成: 2023-04-03
更新: 2023-04-03


    政治の少子化対策は,子育て支援をこれの解決策と定める。
    これは,つぎの前提に立つ:
      ひとは,自分の子どもが欲しい。
      仕事を持っている者は,仕事と育児の両立が難しいので,子づくりに躊躇している。
      貧しい者は,子育てに金がかかるので,子づくりに躊躇している。
    そこで,つぎのように言えばひとは子どもをつくると,定めるわけである:
      「仕事と両立できますよ」
      「子育てにかかる金は国が支給しますよ」

    この対策は,つぎのタイプの者を除外している:
      「先立つ物が無いので,子づくりは自分とは無縁」
    こうして,少子化対策は格差をつける政策になっている。
    実際,少子化支援は,収入・所得と関係なく与えられる。


    さらに,つぎのタイプの者がいる:
      「リストラがあり得るので,子どもをもつことはリスク」

    いまの産業衰退国日本では,リストラは簡単にくる。
    そして日本人は,「防災=リスク・マネジメント=正義」の意識を,「専門家」とメディアからすり込まれてきた。
    リスクを考えるなら子どもはもつべきではない,となる。


    日本の産業が衰退しているからといって,日本買いの外国企業を当てにすることはできない。
    このタイプの企業は,つぎが「人材」の考え方になる:
      「できそうな者を雇って,ふるいにかけ,できない者を解雇し,できる者だけを残す」
    日本の大企業も昔はこれであって,このやり方で躍進した。
    「終身雇用」と思われているが,できない者は居場所を無くし自分から出て行くよう仕向けられる組織風土になっていた。
    「人材は大切にしなけばならない」となったのは,成長に陰りが出てくるようになってからのことである。

    日本買いの外国企業は見栄えがよいので,ひとはこれに雇ってもらおうとするが,入っても残れるのは<できる者>だけである。
    残れたように見える者も,おちおちしていられない。
    新しく入ってくる<できる者>が,自分を<できない者>にする。
    世代交代で落とされない方法はただ一つ,経営陣に入ることである。

    GAFA なんかは,よく大量解雇をする。
    メディアは「業績落ち込み」のように報道するが,GAFA にすれば,業績の変動は始めから当て込んでいることである。
    「業績落ち込み」は,企業にとって大量解雇の機会になる。
    大量解雇は,企業の「棚卸し」であり,溜まった不要物の処分なのである。


    こういうわけで,産業衰退国日本での外国企業の日本買いは,これも格差を拡大する流れである。
    ひとは,全体的にますます貧しくなる。
    そして政治の方はといえば,貧しい者には金を与えねばならないので,金を造ってバラまく。──ただで金を造って,その額を「国の借金」に計上する。
      念のため:
      「国の借金」では,国に金を貸している者はいない。
      国債を買った者に返済するときは,ただで金を造って返済する。
    ということで,ロジカルには,どうにも救いのない構造になっている。

    ひとは,構造では捉えていないが,救いのなさを<漠然とした不安>の形で感じている。
    そして,子をもつことをリスクと感じる。
    この者は,自分を子育てとは無縁の者と定めることになる。


    しかし,「少子化」はよこにおいて「貧しさ」だけを考えるならば,要は考え方なのである。
    日本のいまの「貧しい」は,「普通」のレベルが高いことによる「貧しい」である。
    これが「貧しい」なら,昔は「話にならないくらい貧しい」になる。
    そして,いま躍進しているように見える国も,追って日本のようになる。──少子高齢化の産業衰退国になる。
    「国の借金」にいまは警戒している国も,追って箍が外れるようになる。──国民の求めに応じて,金をバラまかざるを得なくなる。

    これまでは,<フロンティアに進出>でやってきた。
    もうじき,フロンティアは無くなる。
    そしてそのときは,フロンティアの無い生き方が始まるだけのことである。
    そして「少子化」は,結果的にはこの流れに沿うものなのである。