Up 「少子化」の科学 : はじめに 作成: 2023-03-07
更新: 2023-03-07


読売新聞, 2023-03-01


    「少子化」はいま,政府が「異次元の対策」を唱えているところである。
    「異次元の対策」の内容は,<子育ての手当て (給付金) を増やす>である。
    政治は,「少子化」を金で解決する問題にする。
    実際,政治手法は<金で解決する>しかないわけである。

    そして,<金で解決する>は必ず勘違いする。
    「成果」を求めるからである。

    「少子化」は,金で解決できない。
    それは,「少子化」が進行している他の生物種を考えれば,簡単にわかることである。
    金と生態は,もともと次元が異なる。
    生態の出来事に<金で解決する>をあてるのは,カテゴリー・ミステイクなのである。


    人間の繁殖は,営巣タイプの繁殖である。
    巣づくりと巣内育児ができない者は,繁殖に(あずか)れない。

    生物種は,個体数を増やせるだけ増やす。
    個体数の限界を定めるものは,糧の量である。
    糧は有限なので,個体数は一定以上は増えない。

    営巣は,資源を多く要する。
    資源は有限である。
    営巣に与れるのは,一部の個体になる。
    こうして,営巣はつねに競争になる。
    営巣するためには,先ず競争に勝たねばならない。


    <子育ての手当て (給付金) を増やす>は,「少子化」対策にならない。
    それは,既に営巣に(くみ)できている者に対する給付だからである。

    「少子化」は,営巣数が減っているという現象である。
    よって,「少子化」対策の施策は,営巣数を増やす施策である。
    <子育ての手当て (給付金) を増やす>は,いまの営巣者を少しラクにしてやるというものである。
    営巣数を増やすというものではない。


    政治のこの勘違いは,どうしたことか?
    「対策」づくり型政治の手法は,「有識者会議」である。
    よって,「有識者」の段階で,既に勘違いが起こっているわけである。

    大衆は「有識者」を文字通りに受け取って有り難がっているが,「有識者」とは「馬鹿な学生」がそのまま年をくったものである。
    キャリアを積むことは,科学ができるようになることではないのである。
    科学知らずが幼稚な思いつきを述べるというのが,「有識者会議」の実態である。

    これは,悪口をついているのではない。
    どうしてもこうなってしまうということを,事実として述べているだけである。


    というわけで,「少子化」の科学を考えてみることにする。
    どれくらいの広がりになるかは,やってみないとわからない。
    少しずつやってみることにする。