Up 「少子化」対策は,ロジックに思考停止する 作成: 2023-03-19
更新: 2023-03-20


    「少子化」をきちんと数値に表すことは,対策がお手上げになることである。
    数値がシビア過ぎるものになるからである。
    少子化対策を打ち上げるときは,「少子化」をきちんと数値に表わさないことが要諦になる。

    こうして,少子化対策には「こうすることでこうなる」が無い。
    それは,思考停止ばかりが目につくというものになる。


    少子化対策にとってシビアな数値を,ここで簡単に押さておく。

    2020年の国勢調査,人口動態調査,労働力調査から,25〜34歳の女のデータを引くと,
    <子供有り>は<妻でない>にもあるが,少子化対策の直接の射程になるところではないので,話を簡単にするために考えないことにする。

    <子供有り妻>の子どもの総数は,「4人以上」を4人にして計算すると,310 万人。
    これは,
      《仮に上のグラフが子づくりのすべてだとしたとき,
       出生数は 10年間で 310 万人,1年だと 31 万人》
    ということである。
    いま「出生数が 80万人を切った」と騒いでいるが,出生数はまだまだ下がることになる。


    「少子化」が止まるとは,つぎのようになることである:
      《仮に女が子どもを生むのが 25歳から34歳までだとしたとき,
       この間に,平均して女1人が2人の子どもをつくる》

    上のグラフの「25〜34歳の女 583.3万人」の場合だと,女1人が2人の子どもをつくると,子どもの総数は
      《10年間で 583.3 × 2 = 1166.6 万人
       1年だと,116.7 万人》

    上のグラフだと「1年で 31 万人」だったから,途方もないギャップである。


    そして,少子化対策の射程になるのは,<子ども有り妻>183.6 万人である。
    <妻でない>, <子供無し妻>は,射程に入ってこない。
    <妻でない>, <子供無し妻>は,「手当てが無いのでこうなるしかない」といったものではないからである。

    では<子ども有り妻>は,少子化対策の手当てによって,子どもを増やすことになるか?
    そうはならない。
    なぜなら,「25〜34歳女の子づくり」グラフは,「25〜34歳女の就業」グラフと重ね合わせになるからである:
 註: 労働力人口」は,「就業者」と「完全失業者」を合わせたもの。
そして「非労働力人口」が,女の場合「専業主婦」になる。

    そして,子づくり・子育ては,少子化対策の手当てによってラクになるというものではない。
    子育ては, 「生まれて間もないあたりがたいへん」といったものではなく,ずっと手が掛かる。
    子どもが病気になれば,夫婦のどちらが仕事を休むかという話になる。
    この類の出来事を面倒と見込む者は,子どもをつくらないことになる。
    子づくり・子育ては,金が解決する話ではないのである。