Up 「少子化」対策は,勝ち組支援 作成: 2023-03-18
更新: 2023-03-18


      読売新聞, 2023-03-18, 1面
    育休給付 手取りと同額
    男性取得「30年度85%」
    首相表明
     岸田首相は17日、子ども政策をテーマに記者会見を開き、少子化の克服を目指し、育児休業(育休)制度を抜本的に改革する方針を表明した。 産後の一定期間に夫婦ともに育休を取得すれば、休業前の手取りと同程度まで収入を確保できるようにする。 社会全体の意識改革を行うと強調し、「『こどもファースト社会』の実現をあらゆる政策の共通目標とする」と語った。
    「年収の墜」見直し
     首相は、2022年の出生数が80万人を割り込んだことを踏まえ、「このまま推移すると、わが国の経済社会は縮小し、社会保障制度や地域社会の維持が難しくなる」と述べ、「これから6、7年が少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだ」と訴えた。
     男性の育休取得率を25年度に50%、30年度に85%に引き上げると表明。 子どもの出生後8週間以内に最長4週間の休みを取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度の給付金を休業前賃金の67%から8割程度に引き上げる。 休業中は社会保険料が免除されるため、実質的に手取り額とほぼ同額の給付が受けられる仕組みだ。
     女性についても、産後休業後に取得する育休の一定期間、手取り額とほぼ同額を給付する。 首相は時短勤務も給付の対象とするとし、現在は対象外の非正規やフリーランス、自営業者について「新たな経済的支援を創設する」と述べた。
     若い世代の所得増加に取り組む方針も示した。
     一定の年収を境に手取りが減り、配偶者の就労を妨げる「106万円の壁」「130万円の壁」について、「見直しに取り組む」と明言した。 賃上げに加え、非正規雇用の正規化や児童手当の拡充、高等教育費の負担軽減などの政策を包括的に実施する。
     「次元の異なる少子化対策」について、「企業や男性、地域社会、高齢者、独身者を含めて皆が参加し、社会構造、意識を変えていく」と説明。 その一環として、子連れ家族が入場時に長時間並ばなくて済む「こどもファスト・トラック」を国立博物館など国の施設で導入すると明らかにした。
     政府は、3月末に子ども政策のたたき台を取りまとめる。 6月に閣議決定する経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)までに将来的な子ども関連予算の倍増に向けた大枠を示す方針だ。

      同上, 2面
    子育て支援「時間との闘い」
    意識改革・若者支援を強調
    首相表明
     岸田首相は17日の記者会見で、少子化問題は経済社会や社会保障制度など国の根幹を揺るがし、対策は急務だとの考えを強調した。 社会全体の意識改革につなげるため、男性の育児休業(育休)取得促進策などを打ち出したが、財源確保の道筋は見えないままだ。
     「社会構造改革には相応の時間を要する。 少子化問題は、もはや一刻の遅れも許されない『時間との闘い』だ」
     首相は記者会見でこう述べ、危機感をあらわにした。 首相が個別政策をテーマにした異例の記者会見に臨んだのは、少子化の深刻さと「子育てに冷たい」とも言われる日本社会のあり方を変える決意を国民と共有する狙いがあった。
     育休制度の抜本的な改革に着手するのは、男性の育休取得を促進するためだ。 日本の男性の取得率は2021年度時点で13.97%にとどまり、これまでの政府目標「25年に30%」とは開きがある。 それでも首相は「25年に50%」と野心的な目標を掲げ、男性や企業などに意識改革を促したい考えだ。
     厚生労働省の20年度の調査で育休を取得しなかった男性正社員に理由を尋ねたところ、「収入を減らしたくなかった」が約41%と最多で、「職場が取得しづらい雰囲気だった」約27%、「会社で制度が整備されていなかった」約21%が続いた。
     来月からは従業員1000人超の企業には、男性の取得率の公表を義務づける。 首相は中小企業での取得促進を「最大のポイント」と指摘した。 休業者の代わりに人を雇う場合の経費を国が補助するなど、企業の体制整備の支援を行う方針だ。
     一方、国立社会保障・人口問題研究所による21年の調査では、夫婦が理想とする数の子どもを持たない理由は、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が52.6%で最多だった。 21年の平均年収は、20歳代後半で約371万円、30歳代前半で約413万円と、30年前と同水準にとどまる。 物価変動を反映した実質賃金指数は大幅に下がっており、若い世代は現在の中高年が若かった頃に比べ、生活に余裕がないのが実態だ。
     首相は記者会見で、若い世代の経済力を高める方針を示し、働き方改革を断行し、賃上げやリスキリング(学び直し)、非正規雇用の正規化に取り組む姿勢を強調した。
     国民の意識変革に向けては、「こどもファースト社会」を掲げた。 子連れの家族が優先して入場できる「こどもファスト・トラック」は、国の施設から先行することで、郵便局や銀行などにも波及させたい考えだ。
    数兆円財源 確保課題
    政府が「次元の異なる少子化対策」を着実に実行するためには、巨額の財源確保が最大の課題となる。 首相は17日の記者会見で、「私が主導する体制のもとでさらに議論を深める」と述べ、4月以降に具体的な財源を詰める考えを示した。
     政府は、6月に閣議決定する経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)までに、「子ども関連予算の倍増」に向けた財源確保の道筋を示す。 だが、消費増税や社会保険料の見直しを含め、国民に負担を強いる議論は避けて通れない。 「少なくとも数兆円規模の安定した財源が必要」(首相周辺)とみられるからだ。
     政府・与党は、4月の統一地方選や衆参5補欠選挙に悪影響を与えかねないとみて、慎重に財源論議を進める方針だ。 自民党の閣僚経験者は「予算増には年齢や性別を問わず、子育てを応援する機運の醸成が欠かせない。首相の指導力が間われる局面だ」と指摘する。


    動物の世界では,営巣できるのは勝ち組である。
    ヒトの場合はどうか?
    いまの日本だと,営巣できるのは勝ち組である。

    ひとは豊かになると,営巣がひどく物入りになる。
    この物入りをクリアできるのは,勝ち組である。
    こうして,いまの日本は,営巣できるのは勝ち組である。


    政治がする「少子化」対策は,現に営巣している者への支援であり,勝ち組への支援である。
    営巣しない者たちは,そのままである。
    「少子化」は,営巣しない者たちの現象であるから,政治の「少子化」対策は,「少子化」をどうにかするというものにはならない。


    営巣しない者たちの営巣の問題は,「子育てや教育にお金がかかりすぎる」ではない。
    彼らの営巣の問題は,「先立つものが無い」である。
    地方から都市に出てくる若者には,家も貯えもない。
    収入もたいしたことはない。
    政治は何かと「異次元の対策」のことばを用いるが,「先立つものを与える」という「異次元」はさすがにやれない。

    「少子化」対策には,これが格差助長であるという,嫌味がある。
    「異次元」とは「なりふりかまわず」を(てい)良くいっているだけだから,格差助長でも構わないわけだが,それでも「構わない」を言ってよいのは,この対策に効果がある場合である。
    で,効果はあるのかというと,無い。
    「少子化」は営巣しない者たちの現象であり,そして「少子化」対策は営巣しない者たちをそのままにするものだからである。