Up エセ科学 :「分子人類学」 作成: 2019-10-22
更新: 2019-10-22


      Marks (2002), pp.58,59.
    けれども彼ら [類人猿] の DNAと比較するときに、我々は二足歩行、無毛、思春期に見られる体の急速な成長、成熟した女性の腰や胸に見られる脂肪の沈着、男性の髭、あるいは顕著な鼻梁などの遺伝子を比較しているのではない
    何か隠れた生化学的機能をもち、あるいはまったく機能が知られていない他の遺伝子、他の DNA領域を比べているのだ。
    それは昔からある「おとり商法」のようなものだ。
    我々が研究している遺伝子は、実は我々が実際に関心を寄せている遺伝子とは違う。 遺伝的な指令から身体が作られるやり方については、知識が悲しいほど少ない。
    我々は主として遺伝子の重要な機能が停止した場合──病気の場合──の生成物について遺伝子地図を作るが、しかしここで関係してくるのは、かなり別種の遺伝学の知識だ。
    我々は嚢胞性繊維症の遺伝子、ハンチントン舞踏病の遺伝子、デュシャンヌ型筋萎縮症 (筋ジストロフィー) の遺伝子などの言い方をするが、こうした同定の仕方は誤解を招く恐れがある。
    我々は病気を起こす働きをする遺伝子など持っているわけではなくて、ただその遺伝子が完全に機能しない不幸な人には病気が起きるので、容易に突き止められるということだ。
    それは研究の目標になるけれども (そしてしばしば研究計画の資金調達のための存在理由になるけれども)、二つの決定的な領域、つまり第一に
      「正常な状態」の遺伝学
    と、そして第二に
      形態的な発達の生理学と種間におけるその違い
    という領域で、ほとんど何の知識ももたらしてくれない



  • 参考Webサイト
  • 参考文献
    • Marks, Johnathan (2002) : What It Means to be 98% Chimpanzee : Apes, People, and their Genes
      • University of California Press, 2002
      • 長野敬・赤松真紀 [訳]『98%チンパンジー 分子人類学から見た現代遺伝学』, 青土社, 2004.