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原子燃料サイクル

日本のエネルギーセキュリティへの寄与

 資源に乏しく、島国のため隣国とのエネルギーの融通なども難しいわが国において、エネルギーセキュリティの確保は最重要の課題のひとつで す。さらに、今後の世界人口の増加や中国などにおけるエネルギー消費量の増大等も考慮すると、中長期的に原子燃料サイクルの重要性はますます高まっていく ものと予測しています。また、現在原子力発電で使用しているウランも、他の資源と同様に有限であり(可採年数:約85年)、このまま使い続けると供給が不 安定になる可能性があります。
 使用済燃料にはまだ使えるプルトニウムやウランが95%以上含まれており、これを再処理により取り出してリサイクルすれば、使い捨てする場合と比較し て、プルサーマルでは1割以上、高速増殖炉では数十倍、ウラン資源を有効に利用できます。つまり、原子燃料サイクルは技術の力でウランを利用できる期間を 大きくのばすとともに、原子燃料調達の国産化を可能にすることから、資源に乏しいわが国における長期的なエネルギーセキュリティの確保につながります。

 鉱山で採掘されたウラン鉱石は、さまざまな工程を経て原子力発電所の燃料となります。使用済燃料の中には、核分裂しなかったウランと新たに生まれたプルトニウムが含まれており、再処理して回収することで、新しい燃料として再利用することができます。
 このウラン燃料の採掘から再利用の流れを「原子燃料サイクル」と呼んでいます。

採掘

 わが国にはウラン資源がほとんど存在しないため、原子力発電に必要なウランは全て海外から輸入しています。このため、供給源・地域の多様化を図るとともに、調達方法を効率よく組み合わせることにより、ウラン資源の安定的かつ経済的な確保に努めています。

製錬

 製錬とは、採掘されたウラン鉱石を精製し、純度を高めて粉末状のウラン精鉱(八酸化三ウラン[U3O8]/イエローケーキとも呼ばれる)を作る工程をいいます。
 ウランは、一般に八酸化三ウラン[U3O8]量を取引単位としているため、ウランの生産量とは実際にウラン鉱石[U]を製錬した量[U3O8]ということになります。現在、カナダおよびオーストラリアが製錬能力の多くを有し、2002年では世界全体の約51%を占めています。

転換

 転換は、ウラン235の濃度を高める「濃縮」の実施に必要な工程で、粉末状のウラン精鉱(イエローケーキ)をガス状の六フッ化ウラン[UF6]にします。

濃縮

 現在、原子力発電所では核分裂しやすいウラン235の割合(濃縮度)が3〜4%程度のウランを燃料として使用しています。天然ウランにはこのウラン235が0.7%しか含まれていないため、この割合を高める工程が濃縮です。

 現在、実用化されている濃縮方法にはガス拡散法と遠心分離法がありますが、日本原燃(株)六カ所ウラン濃縮工場では遠心分離法を導入して います。遠心分離法では、高速で回転する筒の中にガス状の六フッ化ウランを注入すると、質量の大きいウラン238は外側に押しやられ、中心部には質量の小 さいウラン235の割合が多くなります。このウラン235がわずかに増えた部分を取り出す作業を何回も繰り返すことにより、ウラン235の濃度を高めてい きます。

再転換・成型加工

 濃縮されたガス状の六フッ化ウランは、化学処理されて粉末状のウラン(二酸化ウラン[UO2])へ再転換されます。さらに、この粉末状の二酸化ウランは原子力発電所の燃料として使用する燃料集合体に成型加工されます。

発電

 原子力発電所に運ばれた燃料集合体は原子炉に装荷され、ウランなどの原子核の核分裂により発生する熱エネルギーで蒸気をつくり、発電します。現在、わが国で運転中の原子炉は54基、発電電力量の約1/3を占めています。

再処理

 原子力発電所で使った使用済燃料の中には、核分裂しなかったウランと新しくできたプルトニウムが含まれています。これらのエネルギー資源を回収し、残りの核分裂生成物を廃棄物として処分に適するよう処理することを再処理といいます。
 回収されたウランとプルトニウムは、再び原子燃料に加工して利用します。

中間貯蔵

 原子力発電で使った使用済燃料は、リサイクル可能な準国産のエネルギー資源であり、資源の備蓄として、再処理のため搬出するまでの間、発 電所敷地外でも貯蔵する施設が必要となります。当社は、現在の発電所敷地内での貯蔵に加えて、敷地外に中間貯蔵施設を設置する準備を進めています。

プルサーマル

 再処理によって回収されたプルトニウムをウランと混ぜたMOX燃料(混合酸化物燃料)に加工し、現在の原子力発電所(軽水炉)で利用することをプルサーマルといいます。
 エネルギー資源の少ないわが国は、ウラン資源の有効利用および燃料供給の安定性向上につながるプルサーマルの導入を進めています。
 軽水炉用のMOX燃料加工工場は、現在、フランス、ベルギーにおいて操業しており、イギリスでも新規工場が2001年に操業を開始しました。わが国で は、日本原燃(株)が事業主体となってMOX燃料加工工場を建設・操業することとなっており、2015年6月頃の操業開始を予定しています。