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放射線と放射能

放射性物質と放射線

 世の中の全ての物質は原子でできています。私たちの身体も原子の集まりで成り立っています。原子には水素や酸素など、いろいろな種類のものがありますが、大部分は安定した性質で、圧力を加えても、熱しても化学反応を起こしても、他の原子に変わることはありません。
 しかし、原子の中でもごく一部のものは不安定な性質をもっており、エネルギーを放出して安定した別の原子に変わろうとします。これを原子核崩壊と呼びます。このとき出るエネルギーのことを「放射線」と呼び、放射線を出す物質のことを「放射性物質」といいます。「放射能」とは、原子核が崩壊して放射線を出す能力を意味する言葉で、数量的には1秒間当たりに崩壊する原子の数で示されます。私たちの身の回りにあるもので例えると、電球を放射性物質と思えば、放射線は電球から出る光ということになります。


身の回りに存在する放射線

 私たちの回りには、もともと自然に放射線が存在します。宇宙からふりそそぐ放射線、大地から出る放射線、食物にも放射性物質が含まれてい ます。また、空気中にはラドンという放射性物質が存在し、放射線を出しているなど、常に私たちは微量の放射線に囲まれて生活しています。

身の回りの放射線

身体の中にも放射能

 私たちの身の回りには多くの種類の放射性物質があり、私たちは食べ物や呼吸によってそれらを体内に取り込んでいます。カリウムは自然界に 存在するミネラルの一種で、人間の体内で塩分を低下させ血圧の上昇を制御するなど、健康を保つために必要不可欠な成分です。このカリウムにはカリウム40 という放射性物質がごくわずか(0.01%程度)ですが、含まれています。
 このカリウム40も食べ物と一緒に体内に取り込んでいます。これらの放射性物質は時間の経過とともに放射能が低くなり、新陳代謝されて体内でほぼ一定です。


地域別自然放射線の量

地域別自然放射線

 宇宙や大地からの放射線の量は地域によって異なります。
 たとえば、マグマが冷えて固まった花崗岩が多い地域は、放射線量が高くなり、関東では関東ローム層が被っているので放射線量は関西より低めです。ちなみ に日本の中でラドンなどの吸入分を除く、自然放射線の平均値が一番高い場所は岐阜県で、1.19ミリシーベルト/年す。逆に一番低いのは神奈川県で 0.81ミリシーベルト/年です。
 世界に目を向けてみると、ブラジルのガラパリでは、大地から受ける放射線は10ミリシーベルト/年にもなります。

※ラドン:ラドンはウラン系列、トリウム系列から生じる気体状の放射性物質。空気中に混じっていて、呼吸によって体内に取り込まれるため、私たちは身体の内部で放射線を受けています。


放射線の量と健康への影響

 放射線は一度に大量にあびると人体に影響が出てきます。これまでの調査研究から数百ミリシーベルト以上を受けた場合に影響が出ることがわかっています。しかし100ミリシーベルト以下では、影響は確認されていません。もちろん自然界の程度であれば全く心配はありません。


放射能・放射線の単位

 放射能や放射線の量は次のような単位で表しています。

単位

放射線の種類と透過力

 放射線にはアルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線などの種類がありますが、その種類によって物質を突き抜ける力(透過力)が違います。
 たとえば、歯のレントゲンを撮るときなどに鉛入りのエプロンをつけます。歯のレントゲンは歯の中を見るために強い放射線をあてますが、不要なところに放射線が当たらないように鉛入りのエプロンで防備するのです。

種類と透過力